皇子の絶望






あれから、俺があの場に着いた頃にはその場に綺月は既に居なくて。次に見かけた時は食事の前。義姉上と中庭の物陰でこそこそと二人でなにかをしているのを偶然見かけて興味本位で気付かれぬようこっそり覗いてしまったのがいけなかったんだ。

綺月と義姉上は、物陰で二人で抱き合っていた。

見てくれはどう見ても恋人のそれで、目の前が眩みそうになるのを感じた。心臓が締め付けられるように痛んで目には涙が溢れ出す。呼吸も段々と荒くなり、気付かれない内にその場から逃げ出してきた。

もう夕食のことなんか忘れて俺はまた部屋に逃げ込み、部屋の扉に鍵をかけてベッドに沈む。
いつの間に義姉上と綺月はあそこまでの仲になっていたのだろうか、幼馴染みなのに全く気付かなかった。
苦しい程に締め付けてくるこの心臓は馬鹿みたいだ
自覚する前から自分の敗北は決まっていたんだ
この感情にハッピーエンドは訪れない。

「………っくそ」

初恋は叶わぬとはよく言ったものだ。
まさか俺が男に惚れるとは誰が予想していただろうか。想い人が同性である時点で義姉上と俺とを天秤にかけたところで……いや、かけるまえから結果は誰が見てもわかるというのに。

ああ、苦しい










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