皇子と従者





燃え盛る建物は灰となり、同時に彼の兄たちも灰と化した。俺は火傷跡の残る泣き腫らした白龍の顔に手を添えると言い聞かせるように諭す

「大丈夫、白龍はおれが守るからね。」



+++

「皇子、待ってください!何をそんなにへそを曲げて…!」
「うるさい、ついて来るな馬鹿綺月!」
「そうは言っても私は白龍皇子の従者ですが故…!!」

そそくさと大股で早歩きをしながら目の前を進む我が主を追い掛ける。何をそんなに腹を立てていらっしゃるのだろうか。
少なくとも先程までは嬉しそうに俺の誕生日を祝っていてくれた筈である。自国の皇子に誕生日を祝われるというのはなかなかに不可思議ではあるがずっと昔からの『当たり前』なのでとくに気にも止めていなかったが……。まさか俺の誕生日を祝うことに嫌気がさしたのだろうか。気付かなかった己を恥じてもう一度白龍に謝ろうと歩を早める。
折角今日から16歳、心機一転これからは白龍の従者として生きる覚悟の表れとして白龍のことを「皇子」と呼ぶようにしていたのに、初っ端からこれではお先が不安である

……………あ、もしかして。

「………おい、白龍。待てって!」

正解だった。俺の言葉を聞いた白龍は足を止めるとこちらに勢い良く振り返り、瞳に薄い膜を作ったのだった。

どうやら白龍は突然俺が自分のことを『皇子』と呼び、敬語を使い出したのがお気に召さなかったらしい。

「いきなりお前が俺に対してよそよそしくなったから…何かしてしまったんじゃないかと……!」
「はいはい、ごめんな」
「もし、もうお前が俺の事を嫌っていたら…っ、俺は……って…」
「ごめんって。な?」

ぽろぽろと涙を流しながら俺に抱きついてきた我が主……いや、幼なじみはそのまま俺の肩を濡らすのだった。




「なんで、いきなり敬語なんか…。」
「いやほら、一応俺達もう16だし。そろそろ幼馴染みから卒業しねぇとなと…さ……?」

そこまで言ったところで強い力で肩を持たれ、向きを変えられると背中を壁に押し付けられた。そして当人の腕は俺の両脇に添えられて逃げ道を作らない。所謂壁ドンの状態なのである。

白龍は綺麗な顔にシワを寄せると俺の耳元で囁いた

「余計な事は考えなくていい。俺は何よりもお前が俺から離れることが怖いんだ」

懇願するように今度は俺の腰に手を回して抱き締める白龍の首元に腕を回してやると、同じように耳元で囁いた。


誰が離れてやるかよ


それを聞いた白龍は安心したように微笑むと俺の唇にそっとキスをした。

「……白龍…?」

瞬間、固まる俺に顔を真っ赤にして立ち上がる白龍。意識が覚醒する頃には白龍は耳まで真っ赤にしながら何処かに走り去っていって、残された俺はその場に項垂れる事しか出来なかった
そして絞り出すように声を発する。

「…なんだったんだろうな、今の。」









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