「誰かー」

「ん?」

「紙をー…」





「おい、鳴」


トイレの中から聞こえてくる悲痛な声に気づいたカルロス。


「なに」
「紙がないんだってよ」
「…だってさ、白河」


その言葉をそのまま白河に受け流す鳴。


「…俺の知ったことじゃない」


一刀両断。


「おっれもー!」
「お前らなあ…おい、大丈夫か?ほら」
「おお!あなたは神か!」


がちゃ、とドアを開けて出てきた男のユニフォームに刻まれた文字に、三人は気づく。


『鵜久森』


さらに、その男が背負っているのが自分と同じ1番であることにいち早く鳴は気づいた。そしてそれは相手も同じだった。


「おお!もしかして成宮か!」
「何で知ってるわけ?」
「そりゃ知ってんよ!有名じゃねえか!」


にやつく鳴。お前それ言わせたかっただけだろ、と、稲実の二人は同時に思った。


「ま、よろしくー」
「試合前に会えるなんてラッキーラッキー。いやーそれにしても」
「ん?」
「思ったよりちっちぇーな!」


「…は?」


鳴の声のトーンが一気に低くなる。にも気づかず、相手の男――梅宮聖一は、ちゃんと飯食ってっかー?などと呑気に(かつ一方的に)尋ねたりしていた。


確かに、鏡の前に立つと二人の身長差はまるで理想のカップルのそれである。梅宮は無意識のうちに、プライドの高い鳴の数少ないコンプレックスをついてしまったのであった。


「(やべっ)お、おい白河、もう行こうぜ」
「(…面倒臭いことになりそう)…鳴、行くよ」
「お前、名前は?」
「ん、おう悪ぃ悪ぃ、名乗ってなかったか!俺、梅宮聖一。よろしくな!」
「じゃ、じゃあまた後でな梅宮!ほら鳴行くぞ!」


朗らかに手を振る梅宮。カルロスは必死に鳴を引きずりトイレから連れだした。白河も後に続いた。


















「梅宮、遅かったじゃん」
「おう、南朋。いやそれがよ、トイレで誰に会ったと思う?」
「成宮鳴?」
「うおっ何で即答?!」
「いや、何となく…梅宮が、楽しそうだからさ」


強い奴を見た時の獣みたいな目してるよ、と南朋が笑う。


「おう。小せえのにすげえ闘志だったぜ!」
「多分梅宮も負けてなかったと思うけどね」
「楽しみで仕方ねえぜ…俺たちがあいつらに勝つ瞬間が」
「…うん。俺も、楽しみ」
「っしゃー!やる気出てきたー!おう、お前ら!」
「ん?」「どうした?」「なに?梅ちゃん」

「下剋上、すっぞ!」

「「「「おう!」」」」



(…えっ何急に)(皆分かってるって)(反射でおうって言っちゃったけど)



















「あいつ絶対許さーん!」
「あー分かった、分かったから鳴、落ちつけ」
「…うるさい」
「…おお、どうした成宮」
「それがよーかくかくしかじかで」


カルロスが困惑状態の他の仲間に事情を説明する。


「カルロス、白河!あとついでに樹!」


沸騰状態の鳴になるべく近づかないようにしようとしていた樹がびくんと体を震わせた。恐る恐る鳴のほうを振りかえる。


「な、何ですか鳴さん…?(しかもついでって…?!)」
「おう」
「…なに」

「絶対勝つよ!」



エースの言葉に、聞いていた他のチームメイトたちもくすっと笑った。


(当たり前だ)


抱く思いは全員同じだった。





「よっしゃー、いっちょ揉んだるか!」
「「「「おう!」」」」








目指すは天下の大舞台
(ここから始まる、第一歩)









揉めないわけだが。

あのトイレでの出会いを稲実で!
梅宮の背ってどんくらいだったか…
降谷よりは低かったよね……





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