「こ、怖すぎるっす…お兄さん…」
「ああ…亮さんに悪戯なんて、命捨てるようなもんだな…」
「…あ!ここってもしかして」
「お、純さんの部屋だな」
「そろそろマトモなのが欲しいっすよね…」
「純さん、ああ見えて乙女なとこあっからな。期待できるかもしんねえ」
「手作りお菓子…とかっすか!」
「ヒャハ、そんな嬉しくねえけどな」


少し恐怖が引き、期待感でテンションが上がった2人は、陽気に伊佐敷の部屋のドアをノックした。


「純さーん!」
「スピッ…伊佐敷センパーイ!」
「誰がスピッツだオラァ!」


勢いよく開いたドアから顔を覗かせた伊佐敷の手には箸が握られていた。


「(箸…?)」
「(なんかイメージが違…)」
「何しに来たんだテメェら?」
「…あ、はい。今日、ハロウィンじゃないすか」
「ああ…何ならお前らも食ってけ」
「と、いうことは!準備万端なんすね、伊佐敷先輩?!」
「…まあな。俺じゃなくて、哲がな」
「はい?」
「哲さん?」
「何をやってる、純?沢村と倉持も、早く入れ」


部屋の中から、通いのはずの哲の声が聞こえてくる。


「哲さん、何でいるんすか?」
「ああ、何か今日は泊まるんだと。ま、入れや」
「あ、お邪魔しまーす」
「お邪魔しやっす!」
「かぼちゃ臭くて悪いけどよ」
「お、ハロウィンらしいっすね」
「倉持先輩…!俺たち、ついに辿り着いたんすね!」
「ヒャハ、やったぜ沢村…!」
「む、よく来た2人とも」
「哲さん」
「リーダー!リーダー手製のハロウィンお菓子が食えるなんて、光栄っす!」


沢村は感涙にむせび泣いている。倉持も黙って喜びをかみしめていた。


しかし、2人には見えていなかった。沢村の言葉を聞いて怪訝な顔をする結城が。


「菓子?何の話だ」
「「え」」
「俺が作ったのは…これだが?」


ことん、と2人の前に置かれた皿に乗っていたのは、


「…美味そうっすね、倉持先輩」
「ああ、そうだな…この」
「「かぼちゃの煮つけ」」


そう。目の前でほくほくと湯気を立てているそれは、お菓子というにはあまりにかぼちゃ元来の姿を留めすぎていた。


「…純さん、どういうことっすかこれは」
「いや、あのよ…」


伊佐敷の話によると、こういうことらしい。




『純、今日はハロウィンらしいな』
『ああ、そうだな』
『今更なのだが…純』
『あぁ?』
『ハロウィンを一言で表すと、何だ?』
『(また哲の天然モードかよ)…かぼちゃじゃね?』
『…ふむ。では純、今日は泊まるぞ』
『はあ?(話の繋がりが分かんねえな…)まあ、いいけどよ』





「つまりは純さんが哲さんを騙した…と」
「いや嘘ではねえだろ?!」
「スピッツ先輩、ヒデェっす…純粋なリーダーを…」
「何をごちゃごちゃ言っている?早く食べよう、皆」


2人はしばし考えた。お菓子を求めてさっさと他の部員のもとへ退散するか、それとも…


「…あぁあできねえ!なあ沢村!」
「う、うっす!倉持先輩!」
「「いただきます!」」


2人は決めた。この純粋な我らがキャプテンを裏切ることなどできないと。


まだ十分に温かったかぼちゃは、ほんのり甘くて母の味がしたそうな。













リーダーの天然、発動。
寮に備え付けのキッチンなんか
絶対ないけどそこはまあご愛嬌。




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