「…たこ焼き美味かったっすねー」
「おう。…何か違うような気もすっけどな」
「誰か他のターゲット探しますか?」
「そうだな。…ん?この部屋って」


前園と春市の部屋を出てふらふらと歩いていた2人は、自分たちがある部屋の前に辿りついていることに気がついた。


「…!倉持先輩、ここって…!」
「ああ…どうやらとんでもねえところに来ちまったみてえだな」


2人が目の前にしている部屋。それは。


「亮さん…!」「お兄さん…!」


亮介の部屋だった。


「ど、どうします?飛ばしますか?」
「いやでも弟くんもわりと楽しそうにやってたし…小湊家がイベント好きだという可能性に賭けんぞ沢村ァ!」
「そ、そんな命知らずな?!」
「行け!沢村!」


倉持が沢村の首根っこを掴み、部屋のドアに思い切り頭突きさせる。痛みに呻く沢村の目の前でドアが開いた。


「…何だ、騒がしいと思ったら。何やってるの」
「おおおおお兄さん!スンマセン!」
「いや、いいけど」
「ほら、言えよ沢村!」
「?何を」
「お、お兄さん!」


こうなったらヤケだ、と沢村が頭を上げる。


「トリックオアトリート!」



――一瞬の沈黙。

沢村と倉持が緊張の面持ちで亮介を見つめる。


にや、と亮介が不敵な笑みを浮かべた。


「へえ、ハロウィンね」
「う、うす…」
「懐かしいなあ…神奈川にいた頃はハロウィンパーティーなんかやったっけ」


よし、と倉持は思った。読み通り、小湊家はイベントにまめな家柄だったようだ。


「春市が準備したお菓子を隠してからトリックオアトリートして悪戯したっけ。毎年引っかかるんだから、馬鹿だよねー」
「!」
「で?ああそうだ。お菓子ね。…あいにく今、手持ちがないんだけど」
「あ、そ、そうっすか…」
「悪戯…する?」


再び亮介の口角が上がる。


「「す、すいませんっしたあ!」」


2人は全力で駆け出した。









「…何だ、しないの?つまんないなあ」

亮介はため息をついて、ポケットからチョコレートを取り出し、一口かじってからドアを閉めた。












あらやだ亮介さんたら。




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