「じゅーん」
「あァ?」
「俺に隠し事なんて水くさいんじゃない?」
「何のことだよ」
「んー、そうだな…例えば、隣のクラスの子に告られたこととか」


途端に純が飲んでいた水を噴き出す。汚いなあと言いながら袖に飛んだ水滴を拭った。


「だだだ、誰に聞いたんだよ?!」
「聞いたっていうか、見た。ばっちり。この目で」
「はあぁ?!」
「去年、同じクラスだっけ。結構仲良かったんじゃん?わりと可愛いし。何で振ったの?」
「…いきなり、好きとか言われてもよ。こっちは友達と思ってんのに、困るだろうが」
「わ、近年稀にみるピュアボーイだね」
「っせーよ」
「でもさ。ほんとに気づいてなかったの?あの子の気持ち」
「はあ?」
「分かるじゃん、何となく。自分のこと好きな女子って」
「うわ、嫌な奴だなお前…それで華麗にスルーすんだろ?一番傷つけるパターンじゃねえか」
「さすが純、分かってるー」


でもむかつく、と、呆れ顔の純に一発チョップをくれてやって、ふっと目線を斜め後ろにやる。目が合った相手が慌てて逸らす。やっぱり見られてた。さっきから視線感じてたんだよね。逸らすくらいなら最初から見なきゃいいのに。俺の後ろ姿見つめて何が楽しいんだろ。


心の中で冷たく呟いていると、どん、と横から鳩尾に衝撃。


「小湊くーん」
「ん?どうしたのみょうじさん」
「数学のノート!見せてー」
「残念、俺取ってないよ。哲か純なら取ってると思うけど」
「結城くんいないしー…じゃあ伊佐敷くんでいいや」
「俺は最終手段か」
「ありがとー伊佐敷くん!もうスピッツとか言わないからね!」
「言ってたんだ?」
「言ってた言ってた」
「最初から言うなオラァ!」


みょうじさんが、純のノートを掲げもって自分の席に戻る。


「…いつも思ってたんだけどよ」
「なに?」
「亮介って、みょうじのこと「わーわー聞こえなーい」…何だよ?!」


純が言わんとしてることくらい分かるし、多分そうなんだろうとも思う。けど。


「友達でいたいんだよ。その先は考えたくない。…今はまだ、ね」
「誰とー?」
「うおあ!みょうじ!」
「あ、伊佐敷くんノートありがとー。で、なになに?恋バナ?混ぜて混ぜてー!」
「そんなんじゃないって」
「えー?ほんとー?」
「ほんとほんと。あ、飴いる?」
「いる!」
「オラ亮介、餌づけすんな」
「どれがいい?」
「レモン!ありがとー大好き!」
「はは、嬉しいなあ」
「見事に手懐けてんな…」




このくらいの軽い関係をこれからも続けていきたい。これが今の俺の答え。君は、純並みにピュアだから、俺のことは完全に"お友達"だと思ってるんだろうしね。今はそれでいいんだよ。でも、いつか俺が、この関係に区切りをつけるって決心したら、それに付き合ってもらってもいいかな。いいよね?拒否権なんてないけど。俺は、欲しいものは欲しくなったときに絶対手に入れるタイプだからさ。



ね、なまえ。





君と僕との適切な距離
(縮めていくから覚悟しててね?)











甘亮介が書きたかったのに…どうしてこうなった



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