今日は、普段は忙しくて遊べない降谷くんとの久々のデート。気合い入れて髪いじったり、服選びに時間かけたり、準備は万端。なの、に。


……何だこの寒さは!

地球温暖化トカ嘘デスヨ、皆サン。ここ東京の地に寒波が訪れていますよー!


「さっむい」
「…先輩、さっきからそればっかり」
「降谷くんは寒くないの」
「北海道よりマシです」
「じゃあその完全防御スタイルは何だ」


寒くない、と言いつつ、外にいたさっきまでは、降谷くんの体はコートにマフラー、手袋、毛糸の帽子といったあったかアイテムに守られていた。私が限界を主張していったんカフェの中に避難している今は、それらはだらりと椅子にかけられているけど。


「…着ないと寒いですよ。いくら北海道の人間でも」
「確かにそりゃそうだね」
「なのに先輩はそんな寒そうな格好」
「だ、だってー…」


久しぶりのデート、ですよ?可愛い格好見せたいっていうのは当たり前の思考のはず。ファッション性と機能性がうまく共存してくれないのが悪い。


「…可愛いですけど」
「そうそう、可愛い…って、えええ?!」
「…何驚いてるんですか?」


きょとん、と私を見つめる降谷くん。ああ、本当にこの子はこれだから!意図してじゃなく、女の子を喜ばせるツボをことごとく突いてくる。


「降谷くん」
「はい?」
「君は実に天然かつ悪質な私たらしだね」
「…たらされてくれるんですか」


もう、とっくに。そう呟いた声が聞こえたのか、降谷くんは、柔らかく笑って私の頭をくしゃくしゃと撫でた。念入りにセットした髪型を崩さないように、優しく。こういう細かな気配りができるところも、大好きだけど、食えないなあとも思う。


「あ、もうすぐ映画始まるね」
「じゃあもう出ますか」
「うー…出たくないなあ…」
「チケット買ってるし、諦めてください」


店内の温もりに名残惜しくも別れを告げ、寒空の下に足を踏み出す。冷たい風が身を裂くように吹いていて、思わず肩をすくめた。


寒い。


不毛だと分かっていながらも、本日何度目かも分からないその言葉を呟こうとすると、後ろから、ふわり、と温かい何かに包まれた。


「降谷くん?」
「…使っててください」


私を包んだものの正体は、降谷くんのマフラーだった。さっきまで暖房の下にさらされていただけあって、まだ温かい。


「そしたら降谷くんが寒いんじゃ…」
「最悪、指が冷えなければ大丈夫です」


さすがピッチャー。多分どこぞの眼鏡の指示なんだろうけど。


そして、降谷くんは私の指に自分のそれを絡めた。


「そういうわけで、手袋は貸せませんけど…」


これで我慢しててくださいね。


そう呟いて、降谷くんは私より少し先を歩き始めた。


私は、ほんのり降谷くんの匂いがするマフラーに包まれ、絡めた指にぎゅうっと力を入れながら、たまには寒いのもいいかな、なんて現金なことを考えていた。






a Frozen Street












最初以来の降谷。



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