表彰とか壮行会というのは、得てして面倒くさいものだ。夏は特に運動部の行事が多くて困る。絶賛帰宅部の私のぼやきはともすれば哀れな遠吠えに聞こえるのかもしれないけど、とにもかくにも、暇、すぎる。早く終わらないかな。


『倉持暇』


3文字だけ、絵文字もなしのメールをすぐ後ろに座って、同じく暇を持て余しているだろう倉持に送って携帯を閉じる。


『俺も暇』
『倉持なにしてるの』
『おまえのことみてる』
『へんたい?』
『へんたいじゃねえじゅんすい』
『なんでひらがななの』
『おまえもじゃねえか』
『ほんとだ』
『だろ』


そんなしょうもないやり取りをしていると、次は野球部の番だった。主将の結城先輩が威風堂々とした態度で抱負を述べている。相変わらず纏う雰囲気がクールでストイック、格好いい。倉持も多分結城先輩を見ているだろうから返信は後でいいかな、なんて思っていると、携帯がぶるっと震えた。


『なに見とれてんだ』
『だって結城先輩、格好いい』
『哲さんは格好いいけどよ』
『けど?』
『見すぎ』
『しょうがない、目の保養』
『馬鹿、おまえは』



おまえは、で文面は途切れていて、訂正が送られてくるかとしばらく待っていたら集会が終わった。振り返って倉持を探すとばっちり目が合う。


「倉持」
「あ?」
「途中で切れてたけど」
「あー。続きは直接言おうと思ってよ」
「なに?」
「…耳貸せ」


素直に少し顔を傾けて耳を貸すと、倉持の口元が寄せられて、






「はっ…?!どういう意味…」
「いや俺お前のこと好きだから」


恥じらいもせずさらっと倉持が吐き出した言葉の意味を理解するのには少し時間がかかった。


「え」
「分かったら哲さんばっか見てんじゃねえっての」


馬鹿、と頭をべちっとはたかれる。私はまだ返事なんかしてないのにまるで自分のもの扱いだ。でも確かに、私の心はずっと前からこいつに持っていかれていた気がしないでもない。今まではただの悪友で、例え肩書きが変わったところできっとやることは変わらないのだろうけど、肩書きだけでも一歩前進してみるのもいいかな、なんて一人思った。





その視線を独り占め
(お前は俺だけ見てりゃいいんだよ)










短い!



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