全校集会とか、本当にめんどくさいだけ。


俺は、野球部の壮行会という主旨も忘れて、ぼんやりしながら考え事をしていた。今日練習何するんだろ、とか、どうやってこの暇潰せばいいかな、とか。

ちらっと、隣に座っていた鳴に目をやると、その視線の先にはみょうじさんがいた。一年生。野球部のマネージャーで、器用で気の利くと評判だ。たまに作ってきて差し入れてくれるお菓子は結構美味しくて、まあマネージャーとしては及第点。


「鳴」
「えっ?!な、何だよ白河急にー」
「…みょうじさんのこと、見すぎでしょ」
「はっ、はあぁ?!別に見てないしー!」
「声、抑えなよ…」


はあ、とため息をつく。鳴は分かりやすすぎるくらい感情が顔に出るから見てて面白い。マウンドではそんなことないのに。変な奴。


「なになに、みょうじさんの話?可愛いよなー」
「カルロス!なに?狙ってんの?!」
「そりゃ、あんだけ可愛いし、お菓子とか作ってきてくれて健気で可愛いし何てったって可愛いしな!」
「…それ、顔だけじゃん」
「カルロ、最低ー!」
「ちっげーよ!」
「何がどう違うってのさ!…俺はカルロスと違って、もっと純粋にみょうじさんが…」
「好きなんだ?」
「…って、違ーう!なに言わせようとしてんだよ白河!」
「鳴が勝手に言い出しただけ…」
「お前らちょっとは静かにしてろ!」


雅さんの雷が落ちて、お喋りは中断。ああ、まだ校長の話は長そうだ。退屈で仕方ない。

噂のみょうじさんに目をやると、なぜかばち、と視線がかち合った。


「あ」


つい俺が口を開くと、みょうじさんは慌てて顔を逸らした。あれ、なんか俺、嫌われてる?…まあ、いいけど。













「白河ー、俺とカルロスコンビニ行くけど」
「…バナナオレね」
「一緒に行こうって言おうとしたのに!エース様をパシリとか、贅沢だぞー!」
「…カルロスに言ったんだし」
「俺かよ!」
「ふーんだ。ほらカルロ行くよ!」


鳴とカルロスは笑いながら部室を出て行き、残ったのは俺一人だった。ゆっくりと制服に袖を通していると、こんこん、とノックの音が響いた。


「白河先輩、いますか?」
「…俺しかいないけど」
「し、失礼します」


遠慮がちに入ってきたのはみょうじさんだった。マネージャーでも、二年三年と慣れてくるにつれてノックなんかしなくなるから、何となく予想はついていたけど。



「…」
「…」
「…」
「…あの」


沈黙を破ったのは、みょうじさんだった。おずおずと俺の顔を見上げてくる。


「き、今日はすみませんでした…!」
「…今日?」


何かされたっけ、と今日を思い返してみる。タオル渡すの忘れられたとか、ドリンクが粉っぽかったとか、ボールぶちまけられたとか…いや、ない。大体、器用なみょうじさんがマネージャー業にミスを伴うなんてまずありえないし。

じゃあ、何だ。


「…何で?」
「え、あの…集会のとき、挨拶もせずに顔逸らしちゃって…」
「…あー、そんなこともあったっけ」


正直、忘れていた。俺にとってはどうでもいいことだったし。下が気にするほど上は気にしてないってこと、結構あるし。まあ俺は、例えばボール1つでも拾いそびれがあったら死ねばいいとは思うけど。


「…あの、先輩」
「なに?」
「どうでもいいことでお引き留めしてしまってすいません…」
「…謝りすぎでしょ」
「…すいません」
「ほら、また」
「あ」


ふっ、と口元が緩むのを感じた。


「あれ…白河先輩、笑ってます?」
「…俺だって笑うよ」
「なんか…いつもみたいな嘲笑じゃなくて、ほんとに純粋な笑顔、って感じでした」
「…君は、俺を何だと思ってるわけ」
「え!馬鹿にしたつもりはないですよ…!ただ」
「ただ?」
「今の、私が笑わせたんだなーって思うと嬉しくて」


僅かに顔が熱を持った。これは、確かに。鳴やカルロスが言う"可愛い"が少し分かる気がする。


「…あ、あの!白河先輩!」
「…なに?」
「私…先輩の、笑顔の理由でいたいです…!」


ずっと好きだったんです、と震える唇で付け足すみょうじさん。


あー…少しじゃない、かもしれない。


「…じゃあ、せいぜい笑わせてみなよ」
「えっ」
「なに?嫌なわけ?」
「い、いえそうじゃなくて…」
「…ずっと隣でいさせてあげるからさ」


かなり分かってしまった。大きな瞳を見開いて息を飲む目の前のこの子が、急に愛おしくて仕方なく思えてくる。ふい、と背けた顔は自分でも分かるぐらい真っ赤で。気を紛らわすために、明日鳴とカルロスに何て言って自慢してやろうか、なんて考えていた。




7:3?
(あっ…白河先輩。そういえば鳴先輩が)
(…鳴、先輩?)
(え…あ、すすすすいません!成宮先輩ですね!)
(いいから。…何で名前で呼んでるわけ?)
(それは…その、鳴先輩がそう呼べと)
(…じゃあ俺のことも今この瞬間から名前。強制。…異論は認めないから)









ツンデレ白河。口調不明(^p^)
当サイトの白河のツンデレ度合は
黄金比7:3ではなく8:2ぐらいです。
カルロスコンビニっていう名前の
コンビニみたいになっちゃった



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