君を好きになってから、何回の真夜中を迎えただろう。低血圧なあたしだけど朝君を見ると一気に目が覚めるし、昼間は真後ろから君の背中を見つめているし、夕方は部活を頑張る君にどきどきして、夜は切なさに胸を痛めています。


「…倉持、好きだー」


最初はただの友達だった。軽口叩いてふざけあって、くだらないことで笑った。現に今だってそういう日々を送っている。今までと違うのは夜になるとちくちく痛むこの胸だけだ。

思いの丈を文字にしてみる。倉持が好き。口に出せずに溢れる思いを、数学のノートに書いてみると、少し気持ちが落ち着いた。


「なんかラブレターみたい」


本人の手に渡ることは決してないけど。ため息をついてノートを閉じ、鞄につっこんでベッドに潜る。夢に出てきてくれないかな。明日の朝すら待ちきれない。










「みょうじ、っはよー」


朝練が終わったらしい倉持が、あたしの前の席にがたん、と座る。


「あ、倉持おはよー。朝練お疲れ」
「おう。何かお前、眠そうじゃん。昨日、ちゃんと寝たのかよ」


倉持が夢に出てくるまで寝たり起きたりを繰り返してたせいで寝不足です!と本当のことを言うわけにはいかないので、


「あー、数学の宿題やってたら遅くなっちゃって」


まあ、あながち嘘でもないけど。


「え?今日数学あったか?」
「あるよー。…倉持、まさか」


倉持の顔が青ざめていく。これは、あれだな。


「倉持、さては忘れてましたね」
「っだあー!しかも一限じゃねーか!」
「頭下げたら、見せてあげないこともない」
「お願いします!」


全く、プライドはどこに捨ててきた。しかたないなーと言いながら倉持に数学のノートを渡した。


チャイムが鳴って先生が入ってくる。授業が始まるのかと思えば、急に始まるお説教。倉持は前で宿題を写しているし、あたしは暇で仕方がない。あー、眠いなあ。倉持が夢に出てきてくれなかったせいだ。よし、リベンジしよう。リアル倉持は今忙しいし。ドリーム倉持よあたしを構って。机に突っ伏して寝る体勢を作る。おやすみなさい。








目を覚ましたのは、授業終了のチャイムが鳴ってからだった。結局先生は、一時間お説教を続けたらしい。じゃあ倉持にノート貸す必要なかったな。


「倉持、ノート」
「え、あ、みょうじ…起きたのかよ」
「うん、ぐっすり。寝不足解消」


倉持もちらっと夢に出てきたし。憎たらしいこと言って消えたけど。くそ、腹立つ。


「…いや、あのよ。俺、こーゆーの疎くて、全然気づいてやれなくて、悪かった」
「え?」
「で、一時間考えたんだけど、多分俺も、そうなんだよな」


倉持の歯切れの悪さに、あたし何かしたっけ、と心当たりを探す。




そして思い当たる。倉持がさっきから手にしているノート。あたしの数学のノート。昨日の真夜中、あたしはあれに何を書いた?








「…っあー!消し忘れたああ!」
「ヒャハハ、馬鹿じゃねーの」
「えっ、でも、倉持さっき、俺もそうだって…言った?」


それって、そういうことだと思って、いいの?


「言った。俺も、なまえが好きだ」












ノートの端っこに、たった一言。決して上等とは言えないけれど、あたしと倉持を結びつけた、一通の、


真夜中のラブレター
(にしても恥ずかしいんだけど!)(ヒャハッ、意外に可愛いとこもあるんだな)









倉持好きだーは私の台詞(^p^)



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