部活が終わって、校内にある自動販売機にジュースを買いに行くと、野球部の白い練習着が目に入った。見覚えのある髪型のフォルム。あれ、もしかして。


「小湊くん?」
「えっ…あ、みょうじさん」


やっぱり、同じクラスの小湊くんだった。降谷くんと、あと違うクラスの沢村くんと並んで有名な野球部の一年生。


「部活、終わったの?」
「うん、今、昼休憩。みょうじさんも?」
「そー。あたし、今日は昼からオフ」
「そうなんだ、珍しいね」
「野球部のオフの少なさには敵わないけどね!」


さすがに名門だけあって、野球部は本当に休みが少ない。降谷くんのファンだという女子が、休み少ないから遊び付き合ってくれない、とぼやいていた。いや、野球頑張ってるんだから遊びとか誘うなよ、と思ったものだけど。


「そうだね」
「でも、一軍入りかかってるんだもんね?」
「うん。頑張らないと」
「本当に入れちゃいそうだからすごいよねー」
「え、そんなことないよ。栄純くんも、クリス先輩もいて、まだまだ厳しいし」
「いやいやすごいよ!しかも可愛いし!」

おっとつい本音が。だって小湊くんって本当に可愛い。背も小さいし女の子みたい(って言ったら怒るかな。怒った小湊くんも可愛いんだろうな)。一回頭をなでなでしたいっていう願望をひそかに抱えている。

「可愛い、かな」


小湊くんの顔がちょっと曇る。って言っても目見えないからいまいち変化が分からないんだけど。口元のちょっとした動きで表情が読めるのは、あたしが毎日小湊くんを観察してる結果だって言ったらちょっとストーカーくさくて自分でも気持ち悪いと思う。反省。


「?うん、可愛いよ」
「…みょうじさん、あのさ」
「うん?」
「昼からフリーなんだよね?」
「そうだよー。どうかした?」
「午後は練習試合だから…よかったら、観に来てくれないかな」
「え?行っていいの?」
「うん。来てくれる?」
「喜んで!うわー嬉しい、一回観てみたかったんだよね」
「俺、2番セカンドで出るから」


だから、えっと、と、小湊くんが口ごもる。どうしたんだろう。


「おい小湊、早よ帰って来いやー!」


遠くから小湊くんを呼ぶ声。すいません、すぐ行きますゾノさん、と小湊くんが返事をして、あたしに向き直る。


「絶対かっこいいとこ見せる…から、」
「え?」
「そしたら、俺と…その、」


付き合ってください。


そう言い残して、小湊くんは足早に去って行った。


「え」


今のって、告白?だよね。え、うそ、小湊くん。


て、いうか。


「今のがすでにかっこよかったんだけど」

とりあえず、午後の練習試合は誰よりも近い場所で応援しよう。あたしはシャワールームまでの道を足どり軽く辿っていった。



可愛い+男前の科学反応
(4打数4安打2打点って、反則…!)
(みょうじさんが観てると思ったら、気合入っちゃって)
(何その殺し文句!…かっこよかったよ、春市)
(…うんありがと、なまえ)










一番最初に好きになったのは春市!
うまく可愛さが伝わらない、無念。



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