大事なものはいつも、失くしてからそれが大事だったってことに気づく。

幼稚園の頃、ちょっと破れたから捨てたテディベアとか、小学校のとき仲の良かった子にちょうだいって言われてあげたキーホルダーとか、もう何回も後悔してきたのに、今度は手放さないって決めたのに、何を手放さなかったらいいのかが分からないから同じ過ちを繰り返してしまう。

今度は、大事な大事な幼馴染を、失ってしまった。


倉持洋一とは、赤ちゃんのときから一緒だった。倉持家とみょうじ家は隣同士で、ベランダ越しに部屋も隣っていう典型的な幼馴染。夜中こっそりお互いの部屋に忍び込んで怖い映画見たり、明け方までお喋りしたりした。誰よりも仲のいい、友達というより兄弟のような存在だった。

そして洋一はこの冬休みあたしに、生きる道を見つけたから東京に行くと告げた。



『青道高校の野球部に誘われてよ』
『…え?青道って、東京の、』
『そ。すげーだろ?超名門。この話受けたら、受験勉強ともオサラバ』
『まだ、返事してないの』
『まあな。一応考えさせてくれっつった』
『そ、っか』
『どう思う?』


洋一の、探るような視線を思い出す。あの時あそこであたしが「行かないで」って泣きついたら、洋一は今もあたしの隣にいたんだろうか。

いつも洋一と向かい合って喋っていたベランダに出て、生温い風に当たる。窓に小石を投げても、「何だよ」って出てきてくれる人はもういない。

今頃何をしてるんだろう。向こうでは寮に入るって言ってたけど、長期休みには帰ってくるんだろうか。それとも練習漬けでそんな暇はないのかな。


「…ばか、置いてかないでよ洋一」


こぼれた涙は、ベランダの桟を越えて暗闇に吸い込まれていった。



気がついた時には、もう
(好きだなんて、近すぎてわからなかったよ)









基本的にハッピーエンド好きなので
続編で幸せになれる予定です、多分←



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