▼いつか繋がるでしょう?


例えば、少し爪を立ててみたり。例えば、ナイフを押し付けてみたり。そうすれば赤い血が流れ落ちるんだろう。彼女は兵士と言う言葉は似合わなかった。白くて細い腕はとてもじゃないが兵士らしくなくて、血色の良くない肌は陶器のようで、ちゃんと食べているのか心配になる。そういえば、好き嫌いが多いって言っていた気がする。よく誰かに嫌いな物をあげているのを見かけた。それだけが理由じゃないだろうけど。手首の掴んでいた手に少し力を籠める。骨がゴリゴリと鳴った。

「なまえ、」

ひゅーひゅーと喉が鳴る細い首に指を添わせる。ごくりと唾を飲むのがわかった。ああ、絞め殺したりなんてしないさ。首筋に少し爪を立てた。爪の形が付くだけだった。手首を掴んでた手を離してみると痕が真っ赤に残っていた。白い肌に赤はよく似合う。しかしそれも束の間で、また元の白さを取り戻していく。

「僕はこんなにも、」

今度は近くにあったナイフを手首に這わせる。彼女は怯えたように僕を見つめる。少しだけ、少しだけ。そのまま少し横に動かせば、一本の切れ目から赤い血が少し出てきた。切れ目は随分浅かったようで指の腹で数回撫でればもう血は薄っすらとしか見えなかった。今度は自分の手首に強くナイフを押し付けた。自分の手首からじわじわと溢れ出る血は汚く見えた。ナイフがカランと音を立てて地面に落ちた。こんなにも、こんなにも。

「君のことが好きなのに。」

「ベルトルト、私、」

僕は彼女の声に聞こえないフリをした。



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