▼だから教えて


雨は嫌いだ。窓に打ち付けられる音が嫌い。ザアザアと降る音が嫌い。雨のせいで視界が悪い窓の外をぼんやりと眺める。ひんやりと涼しかった。今日の訓練は、外がこんな調子なので無くなってしまった。この間は雨の中でも対人訓練をやらされたのだけれど。ジャケットが泥まみれになってしまったので、余計に雨が嫌いになった。パタンと本を閉じる音がして視線を窓の外から音のした方へ向ける。

「もう読み終わっちゃったの?」

「うん、面白かったよ。」

そう答えるブロンドの髪の男の子の前には、大量の本が積み上げられていた。図書室は彼と私の二人きりだった。まぁ私は本なんて読みもせず窓の外を眺めているだけなのだけれど。

「なまえも読んでみる?」

「ううん。本を読むの苦手なの。」

本を読むのは苦手だ。もちろん、座学も苦手だ。対人訓練や立体起動の方が何倍も好きだ。なので座学の成績はお粗末なものだった。その度にアルミンに頼み込む。優しい彼はいつも私が解るまで教えてくれる。

「アルミン。」

次の本を手にした彼の名前を呼べば、うん?と律儀に視線までこちらに向けて返事をしてくれる。ブルーの瞳が薄暗い部屋でも綺麗だ。

「雨、止まないね。」

「今日は一日中降るんじゃないかなぁ。」

窓の外を見つめ、そう答えてくれた彼の隣に座り、山積みになった本を手に取る。厚みのある本はずっしりと重たい。ぱらぱらと捲れば難しい言葉ばかりで少し頭痛がした。本を読む彼の横顔をじっと見つめる。睫毛が長くて羨ましい。重い本を持つ手も他の男の子よりも断然細い。ざっくりと切り揃えられたブロンドの髪がきらきらして見えた。

「なまえ、そんなに見つめられると照れるよ。」

視線を本からも私からも反らしてそう呟いた彼の顔は真っ赤になっていた。髪が少し揺れる。雨の音がザアザアとうるさかった。雨なんて、大嫌いだった。

「なまえ?」

「私、好きよ。」

だってこんなにもあなたを独り占めできるんだから。



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