「お腹すいた」

彼は口癖のようにこう呟く。
それは朝ご飯を抜いたからだとか、お昼の時間だとか、夜ご飯が早く食べたいとかそういう時間帯じゃなくて、いつも突拍子もなく、いきなり言うのだ。

「じゃあ自販機でカロリーメイトでも買ってくればえぇんとちゃう?」

「アホ。わかっとるくせに」

えぇ、わかってますとも。
そう付け足して早々と身仕度を済まし、彼の元へと駆けつける。

「じゃあ俺ら帰るから。
先生によろしく言っといてや」

クラスメートはまたか…と呆れた視線をこちらへ送っていた。最初は罪悪感やら何やらを感じていたけれど、もうそんな感情は何処かへ消えた。いつもいつもえろぉすんませんなぁ。

「じゃ、帰ろ」

「ん。」

目的地は俺の家。
親が医者なもんで家を開けるのはもうお約束〜みたいな。

ガチャ、

お互い何も言葉を発しないまま、気付けば俺の部屋の中。
見慣れた家具やベッドがそこへ広がっている。

「謙也、」

「ん?」

いきなり言葉を発したと思えばベッドに押し倒される。

「いただきます」

君はまるで獲物を捉えた獣のように目をギラつかせ、俺を見下ろしていた。
俺は微笑んで目を閉じた。
いや……微笑んでいたかは自信が無いのだけれども。



もう貴方の好きにして
 
(どうぞ、俺なんかでよろしければ!!)
 
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