「…あの、本田さん?」

「なんでしょう、花子さん。」


私が今着ているのはいつものメイド服なんかじゃない。
スリットが深く、スカートはミニ、ガーターベルトでニーハイ、締め付けるようにきつめな手袋。

絶対領域、むっちり、はいてない…ように見えるだけ。
所謂萌え系な、ナースだ。


「なんで私こんな格好を…?」

「今度私がデザインさせて頂く萌えきゅんナースカフェの衣装です。」


もえ…なんだって?

なんで私がそんな衣装を着なければいけないんですか?


「なんでですって?そりゃあ萌え系娘に着て頂くのが一番でしょう。イメージに一番合うのが花子さんなんですよ。」


イメージて何のですか。前に言う普通がどうたらみたいなのですか。


「あ、今日一日その服で仕事してくださいね、アーサーさんの許可は頂いてますよ。」

「はぁ?!何でですか!?」

「カフェの衣装として実用性があるかです。お願いしますよ」


…一応アーサーさんに雇われているのだし、Noとは言えない。
仕方なく私は承諾することにした。

ド変態…じゃなくて、フランシスさんとかには会いたくないなぁ…。


「はぁはぁなんか妙に此処に引き寄せられると思ったら花子ちゃんのナースだってはぁはぁ」

「うわぁ出た!!」

「出たとか虫みたいに言わないでよぞくぞくする」

「ど、ドMに目覚めたんですか…?」


フランシスさんの変態がヒートアップしてる気がする。
嘗め回すような視線で私を一瞥し、笑みを深めた彼には、なんとも言えない悶々とした雰囲気が漂っていた。
例えるならば、ツ○ヤの18禁のショッキングピンクなDVDコーナーのような。
深夜の映画のラブシーンのような。

「はぁはぁいいよ花子ちゃんホントお兄さんの下で…」

余計息の荒くなったところで大声を出す。
いつもならエリザさんが来てくれる筈…なんだけど、ん、なんかいやな予感…


「花子ちゃーん!ちょ、え、やば、きゃぁっ!」


確かにエリザさんはやって来た。
だが、何時ぞやのお風呂の時のように息は荒く、一眼レフを片手に、某変態並にニヤニヤしているという必要皆無なオプションつき。


「やっば萌える!!ちょ、足上げて!きゃあ絶対領域ぃい!履いてないぃぃ!!」

「履いてます。」


エリザさんはとても素敵な人だ。
最初はとても素敵で美人で巨乳な非の打ち所のない人だと思っていた。
だけど、お風呂以来…これだ。
人間、ひとつやふたつ短所があってもしかたない。私なんて一つや二つじゃすまないもん。
………でも、慣れという奴が必要ですね、これ。


「やっば、ちょ、ぱんつ見えるよぉお!」

「えりざ…さん!」

カシャカシャと床に寝そべったりして私を撮り回るエリザさん。
そしてピースしてる自分どうにかしたほうがいいのだとおもう。

「はぁはぁエリザちゃんかわいいよエリザちゃんお兄さん百合もいけ…」

「死んでろド☆変態」

フランシスさんが復活し、フライパン炸裂。だがやはり写真撮影はやめない。
これ、ほんと、本田さん…!!!


「ん、なんか騒がしいなぁ思ったら…フランシスにエリザちゃんやん。どうしたん…って花子ちゃんめっちゃかわいいやん!」


おおー!と言って現れたのはトニーさん。
今日は手にキュウリを持っていた。
あの、助けてくれません?


「めっちゃかわいい!やばいやん!へえー!めっちゃ似おてんで!」
「あ、ありがとう…?」


正直、こういう衣装が似合っても余り嬉しくないです。
褒められてるのは悪い気しないけどさぁ…。


「んじゃあ俺ちょっと厨房いくわ。フランシスも持ってかなあかんし。」
「あ、回収ありがとう、トニー」
「エリザちゃんも制裁おつかれさんー」

…制裁て。よくやるのかな、こういうの。
いや、最初のときも慣れた手つきだったし…うん。あながち否めない。


「そうだ!私洗濯物取り込まなくちゃ!ごめんね花子ちゃん!また撮るから!」

「ああ、はい、あの、“また”はないほうが…遠慮します…」


そういってエリザさんは去っていった。
ふう、こうなったのも本田さんのせいだ。
とりあえず脱がなきゃなぁ…。

メイド室へ足を向け、一歩踏み出したとき、


「お、おい…」


後ろから声がかかる。
少し震えているが、アーサーさんの声に違いなかった。


「あ、アーサー、さん」


顔が真っ赤で、頭をふらふらさせている。
熱か何かかな…。


「大丈夫ですか?熱…?」

「だだだだいじょうぶに決まってんだろばかぁ!ていうかおま、なんて格好…」

「いや、アーサーさんが許可したんじゃ…」


したけどそんなだと思わなかった!とアーサーさんは答えた。
まぁ、ナースといわれてこんなのを想像する人は多くないはずだ。


「…菊に、いっとくか」
「何をですか?」


大方こういうのやめさせろ、とかかな。
ていうか、そんなんじゃなかったら困る。


「スカート、長いって。」


……十分短いですよ、アーサーさん。


「よ、よし!せっかくナースなんだ!治療させてやる!お、俺のためだからな!」
「…あの、風邪ならお医者さんにかかったほうが…」
「いいいいや!お前でいいんだよ!お医者さんごっこ!!」


…まさか高校生にもなって大人の男の人とお医者さんごっこをすることになるとは。



「ほんとは、診察する側がいいけどな…」
「え…?何かいいました?」
「い、いや…」





メイドメイドナース!






^---^




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -