トニーさんに頼まれ、トマトをフランシスさんの所へ運んでいる途中だった。
「ちょっとそこの者」
「へ?」
金髪…ヨーロッパ系の人にしては小柄な男性が居た。
迷彩模様の軍服に、背には、背には…
「ライフルゥゥゥゥウ!?」
思わず叫んでしまった。
まだ死にたくないよ!私撃っても楽しくないよ!!!なんて、どこかで聞いたことのあるようなないような…
白人に話しかけるのは慣れたが、いや、そうじゃなくて………、
やだやだ、涙目で首を振っていると、私が何か困っているのと勘違いしたのか、大丈夫か?と肩を支えてくれた。優しい人なんだろうか。
大丈夫です。むしろあなたのその背の武器をどうにかしてください。
ここは日本です、日本では銃刀法違反で捕まります、あなたの国では存じませんが。
「…もしかして、これか?」
その人は事もあろうに、背にベルトで引っ掛けてあるライフルを前に持ってきた。
私と銃の距離は1mもない。
撃ち殺すのには造作もないことだった。
銃口が太陽の光でギラリと黒光りした。
こ、こええええ!!!
ちょ、あんな光り方…!!!
たとえるならば、
あそこにいるGと…
同じよう、な…え…
「Gィィィィィィィィ!!!」
ひぃぃ!!今日は厄日だぁ!
やっぱり女の子なのだ。その、ご…Gは怖い。
そのせいでとっさに、何かに抱きついてしまったのだが、なにかいやな予感がする。
頭には、ゴツンと硬くて重い鉄の塊…
目を向ければ、そう、黒光りする…
「銃こォォォォォォォオ!」
ついつい抱きしめてしまったのはさっきの男性で、ちょうど私のこめかみに彼の持っていら銃口が当たった。
偶然だが、すごく怖い。怖い。怖い。
あの小さな鉄の部品を1センチも動かすだけで私の頭はパーン!だ。
セダーンといってダショーンだ。
脳みその中身がビチャァッて……
うわ、なんか想像したらきもちわるい…。
「大丈夫か?」
「い、いえ…」
やさしく声をかけてくれた男性。
気がつけばGはどこかへ退散していたようで、私はスカートをパッパと払った。
男性は、ちらりと私に目を移して、私に聞いた。
「リヒテンはどこだ?」
「り、リヒテンちゃん…ですか?」
リヒテンちゃん、といえば大和撫子もびっくりなほどに可憐で細くて奥ゆかしい美少女だ。
いやいやいや、こんな…ライフルを背にした軍人が…リヒテンちゃんに…
私は、あっては困るようなことを考えてしまった。
ま、まさかリヒテンちゃんを人質に身代金を、なんて…!
いやいや、お兄さんが社長かなにかって言ってたし…。
可能性はゼロじゃない…
私はこぶしを握り締めた。
「り、リヒテンちゃんはあなたには渡しません!!」
「…は、」
「知ってますからね!!あなたがリヒテンちゃんをつかってお金を巻き上げようと…!!!」
「ちが」
「リヒテンちゃんの純潔は私が守ります!!!」
彼をキッとにらみつける。
男性は眉間にしわを寄せて私を見ていた。
危ない…!
この人にリヒテンちゃんを渡すわけには…!!
「とにかく!!リヒテンちゃんは私が守ります!!お引取りくださ…」
そこまで言ったときだった。
「あら、花子さん、と、兄さま!」
たったった、と私より少しながいスカートを翻し、私たちのもとにやってきたのは、リヒテンちゃん。
え、え?
彼女は今なんと言った?
兄…さま?
「え、あ」
「…だから言ったのだ。」
兄さまと呼ばれた男性が小さくため息を吐いた。
私…もしかしてとんでもない勘違いを…?
いやいや、もしかして、
ただの、リヒテンちゃんのお兄さんを…犯人扱い?え?
「ご、ごめんなさぃぃぃぃい!!!」
角度90度できれいにお辞儀をする。
リヒテンちゃんも、お兄さんもびくっと驚いて「花子さん…!?」といった。
「か、顔をあげてくださまし…!」
「どうしたのだ…?」
二人とも、おろおろと私を見ている。
顔をあげろといわれても私は上げることなく頭を下げていた。
「いいいえ、勝手に犯人扱いして…!!」
リヒテンちゃんも男性も、状況がつかめない、という風である。
たしかに突然頭を下げられたら…
しばらくすると、お兄さんがかすかにつぶやいた。
「…コレだから、日本人は…。」
「別にかまわん。慣れている。」
「え…」
顔をあげろ、と無理やりあげさせられる。
すると、おでこに人差し指を向けられた。
「…え、いや」
「女はそのぐらい警戒心のあるほうがいい。リヒテンのように無防備ではいつ襲われてしまうかわからんからな。」
「…はぁ」
軍人だからか、すごく警戒心の強い人だ。
きっと、すごく妹を心配しているんだろう。
なんでこの人を犯罪者扱いなんか…
「それに、そのくらい気の強い女のほうが…我輩は好きだぞ。」
ほんの少し、微笑んだように口端をつりあげてお兄さんは言った。
…え。
あ、そうです、か。
「は、はぁ…」
もしかして…くどかれ、た?
「にいさま…!素敵です!!」
リヒテンちゃんのきれいな瞳が、日光で輝いた。
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バッシュたんかわゆす
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