ぐ…。


朝6時、のっそりと起き上がる。


昨日イヴァンさんやライヴィスくん、シーくんたちとはっちゃけすぎたせいか、足腰がいたい。

うわあ…これでも女子高生か。

おばさんか、私はおばさんなのか。


「ん゛…あれ、なんか…だる、」


なんだろう、からだが重たい。

頭もフラッフラするし、少し吐き気もする。


…もしかして…、風邪?


「う゛…だるいなあ…。」



「どうかしたの?花子ちゃん。」

「ああライナさん。なんだか体がだるくて…。風邪だと思うんですけど…。」


「ええ、大変!ど、どうしよ…ナターシャちゃん…。」



あああこのドジっ娘メイドが!

あたふたしてる姿は、やったことがないけど、ギャルゲーとかで萌えとか言われるんじゃないかと思うほどかわいらしい。


体を揺らすたび、その、胸が…揺れるというか。



「けほ、大丈夫ですよ。取り敢えずアーサーさんお越しにいかな、きゃ。」


「ええ!だ、ダメだよぉ!花子ちゃん、ね?」


「大丈夫ですから…ライナさんも…じか、ん…。」


「やだいけない!ごめんね、花子ちゃん!」



ライナさんは、また胸を揺らして、部屋を出ていった。



「…ふう。」



私は、いつものメイド服に着替えて、部屋を出た。


アーサーさんを起こすため、アーサーさんの部屋に行くために、廊下を歩く。


時々フラついてしまうのだが、大丈夫だろうか…。



漸くアーサーさんの部屋のドアの前までたどり着いた。

綺麗な装飾の施された取っ手を手にとり、ぐるり、とまわし、た…



「う、」



所でフラリと頭が180度回転した。


胃の中は、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられ、足はがくがく震えて、目は虚ろ。



「お、おい?!」




ドアを開くとともに、私は倒れてしまった。


アーサーさんの部屋の床は、柔らかかった。









●○●






7時15分。


いつもはとっくに来ているはずの、アイツがやってこない。


どうしたんだ、フランシスにでも捕まったか?寝坊か?

後者のほうが、まだ有り難い。


あいつの声で目覚められないのは凄く残念…い、いや残念なんて思ってねえんだからな!

た、ただ心配な、だけで…。


落ち着かない。

ドアのまえをうろうろ。

今日は確かそんなに書類なかったな。

だから紅茶を淹れに来てくれたあいつと話をするんだ。

そういや部下の尻拭いに、イギリスに帰ったときに美味い茶菓子を買ったな。

あいつと一緒に飲むんだ。

たしか甘党だったと思うし…うん、決まった。



そこまで考えて、ドアノブがゆっくりと下がるのを見た。


ああ、遅いぞ。

どんだけ待ったと思ってたんだ。


そう言ってやろうと、ドアの前までいくと…





…大胆に倒れ込んできた。


心なしか、体が熱い。

火照った頬、無防備に開いた口は、なんというか、あいつに普段ない色気を出していた。



「な、どう…し、たんだよ。」



返事はない。


ただ、花子の荒い息の音と、時計の秒針の音しかそこにはなかった。






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