「で、どうしたんですか?」
ライヴィスくんとシーくんは、公園で走り回り、イヴァンさんと私は、ベンチに座ってその様子を眺めていた。
ふふふ、と笑うイヴァンさん。
ていうか、視線が…
視線が…
視線が凄く痛いです!!!
そりゃ、6月にマフラー+コートは珍しいし、しかも外国人だし、そんな人がメイド服をきた女と話してるんだよ?
とても珍しい組み合わせじゃないか。
ああ、奥さま方の目が痛いわ。
ちくちく刺さっていつか私を貫いてしまいそう
まあ、そんなことを言ってみても物理的にはなにも感じないし、穴が空くこともないのだが。
それにしても、隣のイヴァンさんはまったく動じた様子もなくニコニコとシーくんたちを眺めている。
彼は社長だといった。
だけど、ギルさんやエリザさんから聞いた話を合わせると、普通に召し使い用の風呂に入っていたのだ。
傘下だとしても、仮にも社長だ。
召し使い用のそれに入るか、と言われれば違うだろう。
「僕はね、社長って言ったけど、アーサーくんに頼まれて会社をきりもりしてるだけなんだ。」
「え?」
「最初は姉さんやナターシャと、召し使いとして働いてたんだよ?でもね、途中から書類もするようになったんだ。アーサーくんがそれを買ってくれてね、いまに至る、って訳だよ。」
「へえ…凄いですね!」
召し使いから社長なんて、すごいなあ。
私はメイドだけども社長になる兆しは全く見えないし、なる事もないだろう。
しかも、偶然処理した書類で社長なんて…。
「花子ちゃんがなるなら社長婦人かな。」
「え?」
そんなまさか。
たしかに私はシーくんやアルさんにプロポーズ紛いをされたけれども、本気じゃないだろうし、結婚するつもりもない。
他に知る社長ならアーサーさんと…あとイヴァンさんだけだし。
「ふふふ、気付いてないんだね。」
「な、なんですかぁっ…?!」
「僕がもらってあげてもいいよ?」
「え?」
いや、なに…を?
5秒程の沈黙。
シーくんとライヴィスくんの駆け回る土。
揺れるブランコ。
「イ、ば…ヴァン、さん…?」
「ふふふ、なんてね。アーサーくんに怒られちゃう。」
ぽん、と私の肩に手をおいて、立ち上がり、ライヴィスくんたちに駆け寄った。
ライヴィスくんは、イヴァンさんが走ってくるのを見ると、ズデッと転んだ。
口から魂的ななにかが出ているのは気のせいだと信じたい。いや、信じておくべきだ。
「…元気だなあ…っ。」
よおし、と指をからめた手を天にむかって伸ばし、延びをした。
息をすって、さん、に、いち。
ダッシュ!
シーくんたちに向かって走り出した。
「シーくーん!ラーイヴィースくーん!イーヴァンさーん!混ぜてくださーい!」
こうして私もまた子供に戻るのだ。
←→