午前十時。



「花子ー!遊びに来たですよー!」



突然のこと。

バタン、と執務室のドアが開けられて、シー君が現れた。

紅茶をアーサーさんに持ってきていた私と、書類を書く手を止めて紅茶に口付けていたアーサーさん。


私たちの視線は自然とシー君に向いた。



「…シーくん。」

「おい、来るなんて聞いてねえぞ!」


どうやら予期せぬ客だったようで、アーサーさんは目を見開いた。


たたたたた、と私の方に駆け寄ってきて、ぎゅ、と足をつかまれる。

にこっと笑って、シー君は私を見上げた。

もしも、この可愛い男の子を可愛いと思ってショタコンと呼ばれるのなら私はショタコンでもいい。

正太郎コンプレックス、略してショタコン。


「パパには言ってないですよ!」


どうやらスーさんに言わずに来たらしい。

優しい笑顔のお母さんことティノさんも、頼りになる素敵なお父さんのスーさんも心配しているだろう。


「お前な!ベールヴァルド心配すんだろうが!」

「しないですよ!ライヴィスと遊ぶって言ってきたです!ライヴィスと花子と遊ぶですよー!」


シーくんは私の足から離れて、くるりと一回転した。

布の多いセーラー服が揺れる。

ライヴィス君、というのはシー君の友達のようだ。

シー君は私とライヴィス君と遊ぶつもりできたらしい。



「あの…」


「…はあ、分かった、いってやってくれるか?」

「私は構いませんけど…。」


それを決定する権利は、アーサーさんにあるだろうことは目に見えているし、私はただのメイドだから可否を言い渡すことはできない。


結果、私はライヴィスくんとシーくんと遊ぶことになった。



シー君に腕をひかれて、屋敷を出た。

彼らは近くの公園で遊んでいたらしく、ライヴィスくんは屋敷の外に待たせていたようだ。


「ライヴィス!花子ですよ!」


ライヴィスくんは思ってたより大きかった。

くるりと巻いた髪が可愛らしい少年で、シーくんのような、元気で活発なタイプではなく、とても真面目で礼儀正しい方だった。


「はじめまして、花子です。」

できる限り優しく話しかける。

控えめに、ライヴィスです、と返ってきたときは、とってもかわいくて発狂するくらい、いや、しないけど。


「ライヴィス!花子はシーくんのフィアンセですから、手をだしちゃ駄目ですよ!」

「ええ、年齢さありすぎない?花子さん高校生ぐらいでしょ?」

「愛に年齢は関係ないのですよ!それをいうならアーサーの野郎もロリコンです!」


真面目なライヴィスくん、元気なシー君は思いの外息が会うようでみていて微笑ましい。


だから別に私の頬がだるんだるんに緩みまくりなのは私が変態だからとかそんなのではなくただ可愛らしいというだけなのでそこは是非ご理解いただけることを願うばかりだ。



「よし!ライヴィス!花子!滑り台まで競争ですよ!」



言い出したシーくんが盛大になにもないコンクリートの上で転けて、膝をかすり、泣き出すのはこの後四秒後の出来事である。











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