トニーさんの一言により傷ついた私を慰めるギルさん。

なんで傷ついてるのかまったく理解していないトニーさん。

お兄さんは貧乳も巨乳も大歓迎とか喚いてフライパンの刑にあっているフランシスさん。


彼らと暫く混浴した後、私は逆上せるから、と早めに風呂場を出た。

日本人は長湯だというが欧州の人たちもそこそこだと思う。

いや、日本文化に馴れたからかもしれない。

どちらにしろ、長湯だ。混浴だからというのもあるのだろうが。



服をきて脱衣場を出た。

今の格好はキャミソールにハーフパンツ。

暑い日はたいていこの姿で寝る。

タオルを首にかけて頭を乾かしながら廊下をすたすたと歩いていく。

お風呂は使用人達の部屋の並ぶ廊下の突き当たりにあるから、アーサーさんやお客さんとは滅多に会うことがない。

まあそれが問題あるからそういう構造なんだけど…。


…なぜか目の前にはアーサーさんがいた。


うつ向きがちで一人ぶつぶつなにかを呟いていて、私には気付いていない様子。

少ししてから、前を見たアーサーさんと目があった。

一応お辞儀するとビクリと肩を震わせた後に、顔を赤く染めた。

アーサーさんは赤くなったり震えたり、とても忙しい人だ。



「…こんばんは。」

「…おう。」


彼は一体何しに来たのだろうか、普段この時間かれは読書をしているのだが。

読書のときにかけている赤渕のメガネをかけているし、先ほどまで読書をしていたのだろう。


「どうかなさいました?」

聞いてみるとまた頬をそめて答えた。


「…あ、いや。風呂場が煩くて読書に集中できないだけで別にお前を心配したとかそんなのではないからな俺のためだ。」

「マシンガントークをどうも。」


わざわざ来てくれるなんて世話焼きというか心配症というか。

だからシーくんにもアルさんにもウザがられるんですよ、アーサーさん。


…にしても沈黙が重い。



「あ、アーサーさん。」

「…なんだよ。」


なんか話さなきゃ。

沈黙が重くて声をかけたけれど言うことなんて無いわけで…。

えっと、えっと、えっと。


咄嗟に口から飛び出たのはこんな言葉だった。




「メガネ似合いますね!!」




いや、だから?

みたいな感じだ。

使用人にメガネ誉められて嬉しい人なんて滅多にいない。

そしておそらくアーサーさんはその滅多にいない方だ。


怒られるかな…。


アーサーさんを見上げるとまさかまさかの反応。




顔を真っ赤に染め上げていた。




耳まで真っ赤、なんだかかわいい。

かれはメガネを誉められて嬉しい方の人なのかもしれない。



「…め、メガネいいか?」


「ええとても。」




そう答えるとやけに嬉しそうに去っていった。





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