「…あの、トニーさん。」

「なに?」




「いつまでこのままなんでしょうか。」





幼児化してはや2時間。

トニーさんに抱えられて執務室を出た後はまさに地獄。

このタイミングでフランシスさんに会ってしまった時なんか…

彼はこれまでにないほどはあはあしていたし

私が見た目相応の年なら間違いなく防犯ブザーの紐を引き抜くぐらいだった。



本田さんにボイスレコーダーとカメラを翳され、何処のアイドルだと言うような扱いをされた。20回ぐらいお兄ちゃんと言わされた。

あいにく私にお兄ちゃんは居ないです。


本田さんに聞いてやってきたというアルさんには次の映画のヒロインを頼まれた。



幼女ヒーロー物らしい。どんなだ。

勿論断った。だって映画の撮影中この姿なんて無理です。

当分お兄ちゃんとは言いたくない。


エリザさんは「私の妹ですね分かります!」と言って抱き締めたまま放してくれなかった。

胸の圧倒的な差に落ち込んだとかそんな。


今日に限ってみんなに会うし、べたべた触られ抱締められ。



小学生の居る家庭のかわいいわんこはこんな感じなんだろうか…。



う、きつい。



人間に生まれて心底良かったと思った。







「なぁ 花子ちゃん」



「なんですか?」



「今日ロヴィーノにメシ持ってきてもらう約束しててんけど…いく?」





いく?って、え?



ロヴィーノさん…くるの?





「ロヴィ接客向いてへんからヒマやねんて。だから出前頼んでん。一緒に食べへん?」





ロヴィも此処で食べんねんて!



いつもの変らぬニコニコ笑顔を浮かべたトニーさんは私の許可も却下も聞かずに歩き出した。



遠くに見えるは、トニーさんの部屋。



あとで詳しく聞けば、フランシスさんとギルさんも同じ部屋らしい。



ギルさんとトニーさんの生活スペースと思われるところには服が散乱していた。



フランシスさんは綺麗な家具に綺麗に整頓されている。



ある意味、彼らしいと思う。





5分ほどした後、くるんにツン目が特徴のロヴィさんが部屋に入ってきた。



私と目を合わせると、少しそれを見開いて、首をかしげ、トニーさんの元へ足を運んだ。



中華料理店のラーメンを出前するような銀の箱に二人前のまだ暖かいパスタ。



ロヴィさんも此処で食べるようで、椅子に座り、フォークを手にした。





「…おいトニー。おまえロリコンだからって…」



「ちゃうで?!俺が魔法かなんか使ったんちゃうで?!」



「ばかやろーお前なら『ふそそ』とか言って花子子供にするぐらいやりかねねーよこのやろー」



「俺何やと思ってんの!?」





ロヴィさんはトニーさんに昔からうざいくらいに(本人談)可愛がられ、私がどの様な目にあったのかわかったようだった。



そういえばこのぐらいの年のころにトニーさんに育てられてたのなら、私、一回ぐらいトニーさんに会ったことなかったのかな…。



その頃ぐらいは私よくフェリさんとロヴィさんに良く遊んでもらってたのに。





「花子…なんかなつかしーな。」



「そうかなー?」



「ロヴィこの年のころの花子ちゃんと遊んでんやろ?ええなー…」



「お前みたいなロリコンじゃねーよこのやろー」





ロヴィさんはフォークをくるくるしてパスタを絡め、口の中に収めた。



そんなときに、私の目の前に同じくしてくるくるまかれたパスタがあらわれた。



フォークを持つ手はトニーさんのもの。声も彼のもの。





「花子ちゃん、あーん」





……わが耳を疑った。



あ、あーん?



私は見た目相応じゃないですよ、なんでそんな…。





「食べへんの?」



「なんであーんなんですか」





私の見た目でも流石に小学校一年生ぐらいなのだ。



そのくらいの子なら「あーん」なんてしない。



ましてや膝の上に乗っかって腕に挟まれあーんなんて…。





「あの、トニーさん真面目にやめてもらえます?」



「いやや!食べてやー」



「いややじゃないですなんですかそれ。自分で食べるんで」



「変態扱いされる前に折れろよ、ばかやろー」



「ええやんかーロマンやで!」





何がロマンですか。



ロヴィさんもこんな目にあっていたのだろうか。



たしかに今思い出せばロヴィさんもフェリさんも幼い頃は天使だ。



こんなことしたくなるのはわかるけど…。







「あーん!」



「……あーん」







私が折れて、口を薄くひらく。



口元に付いたソースはトニーさんの指ですくわれて、なぜか、「ええこやなー」と頭をなでられた。



痛いです。





年相応じゃないとロリになるのはきついのだ。




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