少し前に、朝起きたらシー君私の上に馬乗りになっていた事があった。

その日は、少し驚いたけど…まぁ、楽しかったのでよしとしよう。
まだ、12歳だし。

でも…


「あの、アルさん退いて貰えません?」

「えーいいじゃないか!」


今日はアルさんだった。

いやいやいやいや、これ、勘違いされますって!!


「退いて下さい。いやまじで。」

「いいじゃないかー折角来たのに!フィアンセに酷いんだぞ! 」

「ふぃ、フィアンセ!?」


確かにヒロインがどうとか言ってたような言ってなかったようなまぁ言ってたと思うけど…!!!
それと馬乗りになることは全く関係ない!


「ねぇ花子!甘いものは好きかい?」

「え、まあ…好きですが。」


そういうとアルさんはにやり、と唇を歪ませた。

突然部屋を出たかと思うと、大量の紙袋をその手に提げて戻ってきた。


「はい!」


紙袋の中には、なんとまあ…

カラフルなお菓子が。


「え…」


真っ赤なクッキーに蛍光グリーンのマフィン、真っ青なチョコ。

着色料のせいで全く持っておいしそうには見えない。

ていうか、健康に悪そう…、いや、悪い。断言する。


「全部食べてもいいんだぞ!あ、いや俺も食べたいから…」


ぶつくさアルさんは言うが、悪いけど私はコレを食べる気にはなれない。

カロリーも高そうだし。なんか、コテコテして光ってるし。


「いや、私いいですよ…」

「ホントかい!?…じゃなくて!いらないのかい?」

「はい。」


私が嬉々として食べるとでも思っていたのか、ええー、とアルさんは肩を落とした。

残念ながらこういう系は日本人ムリですよ。


「日本人はカラフルなのが嫌いなのかい?日本食は地味だし、キモノだって淡い色ばかり!」

「いや、それが日本文化なんですけど。」

「アメリカにおいでよ!何から何までカラフルなんだぞ!アイスは24色!花子は何色がすきだい?」

「24色とか怖ッ!」


何使ってるかわかりやしない。

そんなの殆ど謎の粉なんじゃないかな。


「……ていうか、なんでお菓子なんですか?」

「だって、女の子はお菓子好きだろ?」


アルさんの中では女の子=お菓子好きという方程式が成り立ってしまっているようだ。

嫌いじゃないけど…これは…ねえ。


「いやいや、今日何かの日なんですか?違いますよね?」

「俺がフィアンセにお菓子を持ってきちゃいけないのかい?」

「だからフィアンセじゃ…」


埒が明かない。

アルさんには理由があるようだが、言うのをためらっているみたいだ。

私に言いたい事があるなら言って欲しいのに。


「なんですかアルさん!もう、ウジウジしてる奴だいっきらいなんですけど!」

「えええ?!お、俺はウジウジしてないんだぞ!アーサーじゃないからな!」


キリリ、と姿勢を正して、私を見つめる。

アルさんの深くて青い目が私の茶色と黒の混ざった目を捉えた。


「いや、実は、アーサーに頼まれたのさ」

「何をですか。」


そういえばもう7時だ。

他の人たちは既に仕事に出ている。

自分だけしないと言うのにも慣れた。いや、慣れちゃダメだけど。


「アーサー、今自分の部下が仕切ってる会社の尻拭いに行ってるんだよ。」

「えっ…」


そうだ、アーサーさんは変態っぽい天使の格好をしていたけど、社長なんだ。

私にはすごく良くしてくれるけど、ホントはとても努力を積み重ねてきた社長さんなんだ。


「んで、アーサーが君の事を心配してね。相手しとけ、ってさ。」


HAHAHA、とアルさんは笑った。

アーサーさん、貴方…


「すごい、気ぃ使う人なんですね」

「アーサーがかい?」

「はい。」


アルさんは、軽く、そうかもね、と呟いた。


「ま、それがいきすぎてるから…俺やピーターにウザがられるんだぞ。」

「ちょ、それ言っちゃダメですよ。一生懸命なんですから!」



アルさんは満足げに、ふぅ、と息を吹いた。



「よし!花子!食うぞ!」

「え…あ、はい。食べます。」

「体重なんて気にしないぜFOOOO!!!!」

「気にしてくださいよぉぉぉぉぉぉ!!!!」











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