「アーサー、遊びに…」
I'm HERO!
え?なんだって?これは挨拶だよ。
まぁいいや、今日はアーサーの家に遊びに来てやったんだ。
序でにこの間撮った映画を持って。
あいつ、俺の映画否定ばっかりするんだよ!
今回は全米が泣いた、と日本でも広告されてる超評判な映画なんだ!
今回こそアーサーを泣かせてやろうと、ノックも無しに部屋に入ると、なんとも言い難い光景が広がっていた。
「ん゛あ、アル…?」
「うぅ…」
ソファで眠る花子と、その上で倒れているアーサー。
そして充満する酒の匂い。
脱ぎ捨てられた『ブリタニアエンジェル』衣装。
「What!?大丈夫かい花子!!」
花子をアーサーの下から引き摺り出して、ドアの外へ連れ出す。
うん、なんだか皺の入ってリボンのとれたメイド服ってエロいんだな!
次はアーサー。
ちょいちょい、と指で頬を突いてみる。
すうすうと寝息をたてている。さっきのは寝言だったようだ。
に、してもまだ俺の夢を見るのかい?!気持ち悪いな!
「返事が無い。唯の屍のようだ。」
「ええええ?!」
パタン、とドアを閉め、見なかったことに。
そうだそうだ、俺はドアを開くと花子が安らかに天使のような寝顔で眠っていた。
それをヒーローの俺がキスで目を覚まさせて、今此処にいる。
酔い潰れたアーサーなんていなかったよ!
「花子!今日は映画を持ってきたんだ!二人でみるんだぞ!」
「え、あーさ…」
「なにもなかったよ。」
笑顔で威圧すると、冷や汗を流して花子は笑った。
菊よりもあからさまな反応だけど、日本人らしいと思う。
「キミこの映画知ってるかい?全米が泣いたんだぞ!」
「あ、あれですか、今CMしてる…。」
「そうだ!知ってるのかい?」
「はい。」
そうだ、日本でもCMしてたんだ!
ちょうどいい、一般公開前に見せるんだぞ!
こんなことするのは花子限定!ラッキーな女の子だよ、君は!
*
「う゛」
辛うじてかかっている布、
それ以外はほぼ全裸に近い格好。
テーブルの上に投げ出されたウォッカのビンとイカの燻製の袋。
目が冴えてきて、一瞬で顔を上げた。
「あああああああ!?」
思いだした。
たしか花子が酒持ってきて、調子乗って飲んじまって、んで…。
花子はいない。リボンが取れて床と仲良ししている。
「俺、変なこと…してないよな!?そんな…まじで…」
情事の後のようなものはない。
だが、え、俺…
散らかるブリタニアエンジェルの衣装からして、脱いだんだろう。
男の勲章を見られただろうか。どう思われただろうか。
絶対紳士という肩書きはもう通らないだろう。
フランシスのような変態扱いを受けるのか?そうなのか?
それだけは御免だぞ!!!
シャツとズボンを拾って、適当に着て部屋をダッシュででる。
「花子っ…」
何処だ、メイドの部屋にもキッチンにも居ない。
庭にも居ないし、廊下は何処を駆けても見当たらない。
くそ、まさか出て行ったか!?
「ちょ、アルさ…」
何処からか花子の声。
アル?!アルと居るのか!?
「ひあっ、ちょ、ムリっ…」
ええええ?!何してんだぁぁぁ?!
「いいじゃないか!初めてじゃないんだろ?」
何がだよぉぉおお!
え、つか、初めてじゃねえの?
「こんな、ムリ!きゃぁああったぁーすーけぇーてぇぇええ!?」
「花子待ってろぉぉおおお!!今助けるぞぉぉおお!!!」
このドアか!と開いた先には、ロシアンたこ焼きと書かれた袋と、皿に乗る怪しげなたこ焼きと、半泣きな花子と、無理矢理口につっこもうとするアル。
「え、なに、たすけ…って、」
「アーサーどうしたんだい?酔いは醒めたかい?」
「大丈夫ですかアーサーさん。」
「え、はじめてとか、むりとか、え?」
「なに言ってるんだい、外でロシアンたこ焼きってやつ売ってたから物珍しさに買ってやってたんだよ。」
「確かに私カラオケとかでやったことありますけどこれ激辛じゃないですか!」
…なんだよ、勘違いかよ。
心配させんなばかぁ…。
「君、何勘違いしてたんだい?だからエロ大使って言われるんだよ。」
「黙れメタボ」
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