その日の占いは12位だった。
私は占いを信じている方なので、もちろん気分は浮かない。
だが、意外や意外。小テストが100点だったり、友達にプリンを奢ってもらったり。
平凡な日常においては最高、だったのだ。
だが、それも神様の譲歩だったのかもしれない。
家には差し押さえという張り紙のされた家具が並んでいて、それをもっていく黒スーツにサングラスのおじさま方。
ドラマで何度か見たことのあるようなシチュエーション。
泣き崩れるお母さん、悔しそうにお母さんの手を握るお父さん。
「お、おかーさん?おとーさん?」
「うっ…う、花子ちゃんっ…」
「すまない…花子…」
私は察した。
こんな状況なんだから薄々気付いてはいたが…。
「おとーさん、借金?」
「……すまない」
ねえお父さん謝ってばかりじゃ分からないよ。ねえ聞いて、今日テスト100点だったんだ。こないだ100点とったらケーキ買ってくれるって言ったよね、私食べたいケーキ決まってるんだ、ねえ、はやく。
いつも通りなら言えた言葉。
もう高校生なんだもん、空気は読めるよ。
お父さん、私はどうすればいいの?
「花子、家事は得意だったな?」
「うん」
突然問いかけるお父さんは今までに見たことのないほど苦しそうだった。
「フリフリしたワンピースも大丈夫…だったな」
「うん。すきだよ。」
「イケメンもすきだよな、お父さん悲しいけど」
「うん、大好き。お父さんもかっこいいよ」
お父さんは目を伏せて涙を堪えるようにして言った。
「お父さんな、花子には幸せになってほしかった。」
「うん。」
「苦しい世界で生きてほしくない。」
「知ってるよ」
お父さんは静かに告げた。
「会社の上司の知り合いにな、イケメンのお坊っちゃんがいてな、その子のメイドを探してるんだ。」
「え」
まさか
「売る、とかじゃない。ちゃんと花子に給料ははいる。それで…残りの借金をなしにしてくれると。」
ごめん、ごめんな、花子、お父さん悪いお父さんだな、と苦しそうに笑うお父さん。
「な、なにそれ」
意味分からないよ。
「嫌なのは分かる。花子もお年頃だもんな。でも花子が幸せに…」
「違うよ!私はそんなのやだ!苦しくてもお父さんたちと居たいよ…やだ、やだよ…」
もう何を言っても無駄なことは分かっていた。
「うえ、おかあさん…」
「花子ちゃん、大丈夫。ずっと私たちは家族よ。お金がたまってまた生活できるようになるまで。」
おかあさんの青い顔もお父さんの歪んだ顔も
私のためだと思うと心臓がぞくりとした。
そのあとはいまいち覚えていない。
ただ、高級そうな車にのせられてそこで眠ってしまったことだけしか覚えていない。
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