あの後結局はスーさんとティノさんとシー君に荷物を運んでもらった。


スーさん達が辞去した後、私はメイド室――というか自室――へと足を向けた。


其処にはライナさんとナターシャさんが居て、紅茶を飲んでいる。

二人はベットに腰掛け、話をしていた。


「ナターシャちゃん!ライナさん!」


声をかけると二人は振り向いて私のほうを見た。

相変わらずライナさんはサスペンダーの執事服、ナターシャちゃんは私とは違うロングスカートのメイド服を着ていた。


「##name1##ちゃんだぁ!今ね、花子ちゃんのお話してたんだよ!」


ねー、とナターシャちゃんに微笑みかけ、彼女は軽く頷く。

二人は容姿こそあまり似ていないけれど、根本的なところが似ている気がするよ。


「え、どんな話?」

「えっとねぇ、アーサーさんと花子ちゃんてどうなのかな、って。うふふ」


どうって、どう?

別に私とアーサーさんは普通の主従関係というものだし、疚しい事は一切ないと言える。

まあ、寝起きに抱締められたりはしたけれど特には問題は無いはずなのだ。


「も、もしかして、なんもないの…?」

「何を期待してるのかまず教えていただけますか。」


ええー、と不満そうな声を漏らすライナさん。

げんなりと余計に目つきを悪くするナターシャちゃん。

そんな顔されても何もありませんよ、主従関係に終止符を討つときは私がお父さんたちの元へ帰るときです。


「そういえば、花子ちゃん。アーサーさんが呼んでたよー」

「えっちょ、ライナさん何で先にそれ教えてくれないんですか!?」

「怒ってたよぉ、『あいつどこいきやがったんだぁーぐすん、くそぉ、ないてなんかないんだからなぁー』って」


怒ってる、っていうかライナさんの話からだと泣いてません?


「怒ったアーサーには強めのアップルティーがいい。」

「あ、ありがとう!」


ナターシャちゃん、仮にもアーサーさんは主人なんで“さん”ぐらいつけましょうよ。







厨房とは別にある小さなキッチン。

そこには茶葉やお酒が並んでいた。


「えっと、なんだっけ。強い…アルコール?」


未成年でお酒を飲まないものだからどのお酒がアルコール強いのか全く持って判らない。

しかも色んな国のお酒がある。

コレは、えーと、イタリアの国旗あるからイタリア産ワイン?

あ、コレはフランス産ワインだな。
これはビールで…。
あ!これなんかすごい!
ロシア産、なのかロシアの国旗が描かれた背の低くて上から見ると丸みを帯びた長方形のボトル。
なんだっけ、ウォッカ、かな?
確か強いお酒なんだっけ…どうだったかな。
まぁ、これでいいか。

適当にグラスとウォッカ(仮)、ついでに何故かあったイカの燻製をお盆に持って、アーサーさんの執務室へ向かった。



「失礼します、アーサーさーん…」

がちゃり、ドアが開いて、目を真っ赤に腫らせたアーサーさんが目の前に現れた。

「目、どうしたんですか!?」
「な、泣いてねえよばかぁ!」

いや、泣いてたとは言ってませんけど。
墓穴掘ってますよ、自分で。

「あの、お酒、要ります?」
「…酒?」





それから、ものの5分だった。





「はははははは!花子!」
「な、なんですかぁ…」

イカの燻製を咥えながら完璧に酔い潰れたアーサーさんの相手をする。
顔を真っ赤にして、変なコスプレをして、無意味に大声をだすアーサーさんは第一印象と全く違う。

「ていうか、アーサーさんなんですかそのカッコ…」

なんというか、まぁ、見たことはある。
所謂、その、変態くさいが…

天使、ってやつなんじゃないかな。

金に近い透けた黄色のリングを頭上に浮かべ
暴れるたび捲れあがる純白のヴェールのような布を纏い

極め付けは先に星のついた棒!!

バカなのか。バカなのか。大事なことなので二回言いました。あれ、これなんだっけ。

「ははははは!ブリタニアエンジェルだ!ほあたぁ!花子にも魔法かけてやろうか?」
「遠慮します…」

なんでこんなことになったんだ。
ナターシャちゃんの言うとおりアルコールを…ある…あれ?

アップルティー、じゃなかったっけ…。

あれ、もしかして、私、勘違い?

というか、すごいお腹がすいた。
ちょうどトニーさんと会った辺りで12時だったんだもん、今は3時。
お腹はぎゅるぎゅると音を立てていた。

「あのーアーサーさぁん…ご飯食べてきていいですか?」
「ダメに決まってんだろぉばかぁ!おら!おまえも飲めよおぉ〜」
「いや、未成年なんで」

高校に入って最初の授業は高校三年間での自分との約束だった。
私が書いたのは『アルコール・タバコは20歳から』
先生は妙な目で見ていたが自分では最高の事だと思っている。
こんなことで、自分との約束を破るなんて、まっぴら御免だぜ!!!

「かりえどぉぉぉぉ!!てめーぶっころす!フルボッコにする!」

アーサーさんは何故か置いてあるかわいいくまのぬいぐるみに跳び蹴り。
ああー…くまさーん…

「金色毛虫ぃぃいい!!!」

誰かたすけてくれー。たのむー。




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