部活終わりの帰り道。
レギュラーと名前ちんとコンビニ寄ってアイスを買って寮まで帰るのがお決まりコース。
でも今日は違う。
三年は進路の話かなんかで居残り、劉ちんは留学の書類かなんかで居残り。
だから今日は俺と室ちんと名前ちんだけ。
そして違うところがもう1つ。
いつも笑顔でお気に入りのバニラアイスを頬張る名前ちんの姿がない。
名前ちんはちゃんとここにいる。でもアイスを持ってない。
アイスが嫌いになった?そんなわけないよね。真冬でも食べるのに。
俺は右手の空いた名前ちんに違和感を感じていた。

「名前、アイスはどうしたの?」

室ちんが俺の心を読み取ったように名前ちんに尋ねた。
すると名前ちんは少し浮かない顔で答える。

「ちょっと、太っちゃって」

あはは、と苦笑いする。俺にはよくわからなかった。
太ったって、名前ちんなんか変わったっけ?
見たところそれはあんまり感じない。俺がちょっと鈍いのもあるかも。
俺はおかしを食べれば食べただけ、背が伸びてきたからあんまりよくわかんなかった。
室ちんは女の子だからなぁ、なんていってへらへら笑ってる。
何故かその笑顔に無性にイライラした。俺にはわかんないのに、室ちんにはわかるの?
アイス食べたいなら食べればいいじゃん。我慢することないのに。
俺は自分が持っていたアイスを名前ちんの口におしつけた。

「ん、」
「…アツシ。」
「む、紫原くん?」
「食べないの?俺もう1個あるからいらない。あげる。」

室ちんも名前ちんも、ありえない、この世の終わりだ、みたいな顔をしていた。
だって、俺がアイスあげたんだもん。そりゃそーだよねー。
食べかけのアイスを名前ちんに押し付けてからもう1つのアイスを取り出そうとすると、名前ちんは小さな声で俺を呼ぶ。

「…いらない」
「なんで」
「その、太っちゃうし」
「別に名前ちん太ってないじゃん。ねー室ちん。」
「ああ、うん。気にするほどでは…」
「き、気にするの!」

だからいらない!と俺にそのちいさな手でアイスを押し付けてきた。
少し溶けていて、指にアイスが垂れている。おいしそうだ。
それをぺろ、と舐めると、名前ちんは驚いて後ろにふらついた。室ちんが片手で支える。

「な、なにするの」
「…おいしそうだったから」
「食べたいならこれ返すってば」
「それはいらない。名前ちんについてるアイスが食べたい」
「アツシ、名前が困ってるよ。」
「室ちんは黙っててよ。俺、納得いかない。」

もはや何に怒ってるのかすらわからなかった。
名前ちんがアイスを食べないこと。俺がせっかくあげたのに嫌がること。
名前ちんのことをわかったようなフリをする室ちんにもいらいらする。
こんなにいらいらするのは暑さのせいだ。アイスを食べて冷まそう。
…そうだ、いいことを考えた。

「名前ちん、手出して」
「…え?」

アイスを受け取って手を空にしたあと、名前ちんは何も疑いもせずに手を出す。
そこに俺は持っていたアイスを落とした。棒のほうじゃなくて、つめたいところ。

「っひゃあ!」
「アツシ!」
「っん、」

名前ちんの腕を掴んでぺろ、と手を舐める。アイスは名前ちんの手の熱で殆ど溶けていた。
俺の背が高いから、名前ちんは挙手するような姿勢になる。
室ちんも俺をとめようとするけれど、どうしたらいいのかわからないのか、棒立ち状態だ。

ちゅ、ちゅ、と音を立てて名前ちんの手を舐めきる。
振りほどけばいいのに。でもできないよね、俺が力いれてるから。
非力な名前ちんは顔を真っ赤にしてそらして、俺が舐め終わるのを待っているようだった。

アイスが溶けて腕に流れ出したので、つつつ、と白い腕に舌を這わせた。
すると名前ちんの反応が変わる。
ん、なんて甘い声を出した。それにちょっと室ちんが反応する。
熱いのか、暑いのか。顔が赤い気がする。

「…アツシ、そろそろ」
「まって、もうちょっとで食べ終わるから」
「ふぁ、むらさき…ばらくんちょっと…」
「もーちょっと」

最後に指の間をなぞるように舐める。
これにもちょっと名前ちんは反応しているようだった。
なんだかかわいい。
ちゅう、と指を吸うと少し指先に力が入る。
かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。

「ごちそーさま」
「…っ」
「どーしたの」
「う、ううん…なんにも…」

名前ちんは顔を真っ赤にしたまま俺を見ない。
室ちんはまったくアツシは、なんて言って呆れたように、俺の唾液がついてるのか、名前ちんの手をハンカチで拭いていた。

「こういうことを道端でするのはやめろよ」
「うん、じゃあ今度は家でする」
「えっ!?ひ、氷室せんぱい、それは…」
「じゃーこんど名前ちん、うちの寮来てね。男子寮って女子はいれるのかな?」

わかんないや、でもきっと大丈夫。
ダメなら学校でもいいよね。
にへら、と笑うと名前ちんは顔の赤みを濃くした。










120803
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陽泉の皆さんの感覚がおかしい
劉さんの呼び方がわからないので、分かり次第修正します。


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