運命とは時に残酷なものである。


「だから言ったのだよ。あの男はお前と相性が悪いと。」
「そんなこと言われたってさぁ…相性を飛び越えられるくらい好きだったんだもん…。」
「実際飛び越えられていないだろう。」

クールな目で私を見つめる彼は緑間くん。
同じクラスの占い好きさん。バスケ部らしいけど私バスケのルールわからないから見たことない。
席が隣だったことがきっかけで仲良くなり、こうして恋愛相談を持ちかけるような仲になった。

「前から言っていただろう。お前とは生年月日星座血液型全てがあの男との相性最悪だ。」
「う…」
「告白した日だってお前が一番運勢のいい日を選んだ。だがこの結果。そういうことだ。」
「別に相性は関係ないもん…。多分私のことが好みじゃなかっただけだもん…。」
「努力すれば叶うとでも?それだからお前はダメなのだよ。お前が努力してもお前とあの男の相性は最悪。そう星に決められているのだよ。」
「のだよのだようっさい…。星に決められてるって言ったって、それくらい破れるようじゃなきゃダメかなって思ったんだもん…。」
「ラブロマンスの読みすぎだ。実際ロミオとジュリエットは結ばれることはなかった。天命はそういうものだ。」
「…緑間くんの好きな人は相性どうなのよー」
「生年月日血液型星座共に最高だ。」
「ふぅん。」

はああ、と本日何度目かのため息をつく。
最初のうちはため息をつくと運が逃げるだのなんだの言われていたけれど、今の私に運もへったくれもあったもんじゃない。
生気自体ぬけかかっているようなもんだ。こんな抜け殻状態の私からいったい何が出て行くというのか。
緑間くんは目の前で私なんか居ないかのようにつめのお手入れをしている。
毎日欠かさないらしい。女子かお前は。つめのお手入れなんて私毎日やってない。

「私もそうやって毎日つめのお手入れしてたら先輩と付き合えたのかな…。」
「無理だろうな。それにオレのこの爪の手入れは運気を上げる為でなくシュートの為だ。お前がやっても無駄なのだよ。」
「もしかしたら先輩、つめの綺麗な子がすきかもしんないじゃん。」
「その可能性があったとして、それだけでお前に目が向くとは到底思えないが。」
「…そんなに言わなくてもいいじゃん。」

失恋して傷心した乙女によくそれだけの暴言が吐けるものだ。
暴言というよりは、「真実なのだから仕方ないのだよ」とか言われそうだけれど。
こういうときは普通「名前ちゃんにもいい人が現れるよ〜」とか言うもんだと思うのだけど、あいにく私にはそんな慰めてくれる友達はいない。
…別に友達がいないわけじゃない。

「あーあー…先輩よりも素敵な人が現れないかなー…。」
「相性だけならこの学校の生徒全員といっても過言ではないだろうな。」
「そんなに私と先輩の相性悪かったの…。」
「コレまで見たことがないくらいに最悪だったな。告白する前にも何度か言っただろう。」
「そうだけどさぁ」

恋は盲目といいますか。
つめから目を離さない緑間くんに腹が立ったので、つめのお手入れセットを一つ手にとってみる。
すぐに返すのだよ、といわれたけれどムシ。だって腹立つし。
結構高そうだなぁ、と光に照らして銀のそれを見る。ぴかぴかだ。

「逆にさ、私に相性がいい人なんているの。」
「…いいの程度によるが。」
「じゃあ最高の人は?」

先輩との相性が悪かったなら、いい人を探すしかないじゃない。
お手入れセットを緑間くんに返して頬杖をついて彼を見た。
さっきまで相性が相性が言っていた彼が押し黙る。
もしかしてわからないとか?占いの申し子真ちゃん(って高尾くんが言ってた)なら分かるはず!

「ねー誰なのよ」
「…7月7日生まれのB型の人間だ」
「7月7日生まれねえ…」

そんな人いるのかな。七夕じゃん。
クラスメイトの誕生日を思い出していくが7月7日生まれの人はヒットしない。
なおかつB型。大分限られてくる。

「緑間くん、そんな人知ってるの?」
「ああ」
「うそ!誰?」
「お前もよく知る人物だ。」
「ええ?高尾君…じゃあないよねえ。じゃあ誰が…」
「オレだ。」

…え?

「おれ?え?しんちゃん?」
「その呼び方をやめるのだよ。他に誰が居る。」
「…そうだけどさ。」

緑間?緑間くんなの?
今まで相性が悪い相性が悪いといってたのは、自分と比較していたから?
…っていうか、さっき緑間くんの好きな人と相性最高って言ってなかったっけ?

「緑間くん、あのさ…」
「何なのだよ。」
「その、緑間くんの好きな人って…」

誰なの、と口にする前に大きな手が私の唇を押さえた。
いつもに増して真剣な眼をして緑間くんが言う。

「オレが思いを寄せていることにも気づかず恋愛相談をしてくるような、7月7日生まれB型のオレと相性がいい目の前に居る女なのだよ。」

それだけ言うととっとと片付けて教室を出てしまった。
ぽかーん。立ち尽くす私。思いを巡らせようやく理解して、赤面した。


「いい逃げってずるい!」






120625


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