「名前待ってよ」「やだやだやだやだ待たないいいいい!」「困ったなぁ…。そんなに逃げられちゃ、追いかけるしかないね。」「ぎゃぁぁぁぁぁあ!」 2年の廊下を走り回るのは帝光中学2年の私名字名前と同じく赤司征十郎。今私は彼と命がけの鬼ごっこをしていた。コンパスを持ったまますごいスピードで追いかけてくる赤司くん。と、それから逃げる私。ちなみに50m走は6秒台である。コレが唯一の自慢。 「ちょっ、次の授業まであとっ、何分?!」「5分だよ」「うそおぉお?!」 後5分もこのスピードでダッシュ、は無理だ。短距離は得意だが長距離だけは大の苦手な私には無謀な挑戦。と、いうことで頭脳戦に移ることにした。前方に見えるは紫原敦。私はあっくんと呼んでいる。成人男性でもそうそういないような長身の持ち主だが、中身はガキである。私はそんな彼に助けを求めることにした。 「あっくうううううん!」「あら?名前ちん…と、赤ちん。」「た、たすけてっ、あっくん!」「なになに?鬼ごっこ?」「う、うん!赤司くんが鬼!っだからたすけ…」「敦、名前を捕まえてよ」「わかったー」「うらぎりものおぉおお!」 裏切るも何も、最初から敦は僕の味方だよとヘラヘラ笑って見せる赤司くんを後ろに、私は勢いそのままあっくんにダイブした。からだの大きいあっくんは私のような重い女子が突進してきても余裕で受け止めてくれる。優しさである。 「名前ちん捕まえたー。」 いや、優しさでなく赤司くんへの忠誠心だった。 「よくやったよ敦。はいまいう棒。」「やったー、赤ちんありがとうー。」 ホイ、と宙を舞いあっくんに渡されるまいう棒(塩マヨネーズ味)。私はこの10円のお菓子で売られてしまうのだ。安い女である。 「ホラ名前帰るよ」「誰がココまで走らせたんだよ…」「何かいったかい?」「いえなにも!」 コンパスの針をキラリと輝かせて構える赤司くんに逆らえるだろうか、いや、無理だ。(反語を活用してみる。) 「名前はいつも元気だね。」「い、イヤベツニ…。」「謙遜することなんてないよ。」「謙遜じゃねーよ…」 逃げるからおいかけて!
(嘘です、おいかけないで!)