※下品





「ただいま帰りました」
「おーおかえりんしゃーい」


ドアを開けて返ってきた声は、本来家で聞くものではなかった。
癖のある話し方と声は何度確認しても聞きなれたパートナーのもので、彼のことだから別段驚くことでもないと思い、何事もなかったかのようにリビングへ向かった。


「なぜあなたがいるんですか仁王くん。」
「暇じゃったから」
「暇ではありません。邪魔です。」


紳士の名が泣くぜよ、と言われましたが、仁王くんに紳士な態度をとるつもりは皆無なので無視。
…したいところだが、すると余計にうるさいのは目に見えているので、はい、と適当に相槌を返した。


「話聞いとらんじゃろ」
「そうですね」
「…。」


ネクタイを解き、仁王くんが座っているせいで狭くなったソファーに腰かける。
仁王くんは他人の家だということも気にせず、テレビのリモコンを触っていた。
ピッ、ピッと一定速度で変わっていたチャンネルが止まる。
おそらくこれが一番面白いと判断したのでしょう。
私もその番組に目をやった。
去年やっていたドラマの再放送らしい。
妊娠した女子高校生がポロポロと涙をこぼしていた。


「名前ちゃんもいずれこうなるんかのう…」
「なぜ名前が出てくるんです!」


突然、仁王くんの口から愛妹の名前が飛び出る。
名前は真面目で清らかな娘ですから、こうして適当な男と避妊しないセックスに飲まれ妊娠することなんてないでしょう。
むしろさせません。絶対。


「名前ちゃんは大変やのう、こんなのがオニイチャンで。」
「名前を思ってのことです。」


メガネのブリッジを押し上げテレビに集中する。
女子高校生が母親に責められているところだった。
どうして責任もとれないのに、考えられないわ、と自分の娘とは思えないような罵声を浴びせてゆく。



「…もし、もしな?もし名前ちゃんが妊娠したらどうする」
「どうする、といいますと?今ですか?」
「今じゃ」
「…考えにくいでしょう。まだ小学校ですし。」
「小学校でもヤる子はヤるし、生理も始まっとるじゃろ」
「…やめてください」
「ほんまのことじゃ。で、どうするん?」
「もし妊娠したなら、本人の意思に任せます。」


名前が生みたいというのなら協力は惜しみません。かわいい妹ですから。ですが、妊娠させた男には容赦しません。去勢してやりたいですね。そしてもし望まない妊娠でしたら男を…もしかしたら殺すかもしれないですね。中絶はできる限り考えたくありません。かわいい妹の子ですから。
そう言うと、仁王くんは心底びっくりしたような顔でクッションを抱き締めていました。
そのクッションは妹のお気に入りなのでやめていただきたい。


「柳生、お前さん以外と嫉妬深いんやのう」
「嫉妬ではありません。兄として当然です。」
「オニイチャンは大変やのう、俺も去勢されんよう気つけよ。」
「…べつに何もなければ去勢しませんが。」
「いやあるかもしれんよ」


は?とつい柄の悪い声が出る。

仁王くんはにやりと笑っていった。



「俺今名前ちゃんと付きおうとるし」




仁王くんしね












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