豊臣家番外編






11月11日のことである。


「ただいまですー」
「只今帰りました」
「おかえり、2人とも。あれ、珍しいね2人一緒だなんて」
「剣道部が休みだったんです」
「へえ、そうなんだ」

半兵衛さんがスーツ姿で出迎えてくれた。
ネクタイを解いているから、きっと仕事帰りなんだろう。
それにしても、今日は仕事が終わるのが早かったんだなぁ。

「ああ名前ちゃん、ちょうどよかった。ポッキー好きかい?」
「え?」




-




大きなダンボールを部屋へ持ち込む。
その中には沢山のポッキーが詰め込まれていた。
味はいろんな種類で、一般的なものから季節限定ものまで揃っている。
どうしたのかというと、秀吉さんが会社で貰ってきたそうだ。
なんでも、今日は「ポッキー&プリッツの日」らしい。

「今までは近所の子たちに全部あげてたんだけどね、名前ちゃん好きかなあと思ってとっといたんだよ」

そう言って半兵衛さんが渡してくれたのだ。
たしかにポッキーは物凄く好きだけど、流石にコレだけの量は食べ切れそうに無い。

と、いう訳でこのポッキー試食会に無理矢理三成君を連れ込むことにした。
ポッキー試食会と言っても私の部屋でいろんなポッキーを消化していくだけなのだが。
沢山の味があってどれも食べてみたいのだけど、全部1人で1箱ずつ食べていくのは辛いので、三成君と半分にしようという魂胆だ。
三成君はあまりたくさん食べる人では無いけれど、甘いものは嫌いじゃないって言ってたし。
是非協力していただこう。

そうこうしてる間に三成君がドアをノックして部屋に入ってきた。
いつだったか、着替え中にドアを開けられたあの日から、三成君は物凄く慎重にドアを開けるようになったのだ。


「さーさ三成君そこ座ってー」
「…これだけの量を消化するのか」
「うん。がんばってねー」
「ふざけるな貴様も食べろ。というより貴様が食べたいというから…」
「そうだけど!ていうか三成君も甘いの嫌いじゃないよね…?」
「す、好きだといった覚えはない!!!」

とりあえず手をつけていこう。
まずはスタンダードなヤツからいこうかなー。いや、やっぱりデコレーションポッキーとか…。
悩んだ末に、秋限定のモンブランコーティングのポッキーを食べることにした。
パッケージが何よりおいしそうだし、秋限定なんだから今食べるべきだよね!
ペリペリと封をあけて中を見ると袋が二つ入っていたので、片方を三成君に渡した。

「はい」
「…。」

いらない、といったような視線でこちらを睨みつける。
睨む、と言っても家康君に向ける目つきほどじゃないし、そろそろ慣れてきたので気にせずにデコレーションポッキーを食すことにした。

「おーおいしい!」

なんともいえない甘みが口のなかに広がる。
三成君はまだ袋を持ったまま開封しようとしない。
こんなにおいしいのになぁ。

「三成君食べないの?すっごいおいしいよ!」
「…いや」

三成君は私とポッキーの袋をチラチラと見比べている。
なんなんだ、この反応は…。

と、思ってまた新たに一本ポッキーをくわえたところで、三成君が姿勢を変えた。



「そんなに美味いのなら」



さく、ポッキーのデコレーション部分を少しかじったところで私は固まった。
三成君がポッキーのデコレーションされていないクッキー部分を齧っている。
つまりは、簡単に言うと

―――ポッキーゲーム状態だ。


「え」
「こちらにはクッキーしかないのか」


さくさく、と三成君がポッキーを食べ進め、デコレーション部分に口をつけた。
それにより、数センチ私と三成君の距離が縮まる。
え、なんだこれ


「…甘い」
「えっうんそうだね甘いよね…」


甘いよね、じゃなくてだな。

「貴様は食わんのか」

美味い美味いといっていたのは貴様だろう、
いやおいしいですけどそんなに近くで食べろといわれても。
やっぱり食べたいので少しだけ距離を縮めた。


さくさく、とポッキーの音だけが私の無駄に広い部屋に響いた。
ポッキーの山に囲まれてポッキーゲーム。些か可笑しな状況だ。

そうこうしている間に三成君と私の距離が物凄い近さになっていた。
あと一回、どちらかがサクっといってしまえば唇が付きそうだ。
うわぁ、どうしよう。
三成君も同様に気まずいのか、そっちがくわえはじめたにもかかわらず視線をどこかへやっている。
これはやっぱり折ったほうがいいのか?いやでもなんか…このままでも…じゃなくて!


「あのみつなりく「名前ちゃーん」ボキィッ


折るべきか悩みに悩んでいたポッキーは半兵衛さんの登場により一瞬で砕かれた。三成君の手によって。
お互い何をしていたがたった今しっかりと理解したかのように顔を沸騰しそうなくらい真っ赤に染めて、半兵衛さんに正座で居直った。

「ははははははいなんでしょうか!!」
「え、いやポッキー1箱貰ってこうかと…ってどうしたの2人とも正座して」
「いえ!!!何もありません!!ご心配いりません!!半兵衛様!!!」
「そそそそうですなんにもないです!!」
「…そう?ならいいけど…」

じゃあね、と半兵衛さんはノーマルポッキーを一箱もって去っていった。
三成君も何か居た溜まれなくなったようで、それについて行くように私の部屋を出ていった。
バタン、と閉められたドアがやけに哀愁を放っている。

いかん、さっきまでの雰囲気はあまりよくなかった。
…半兵衛さんの登場がなければ、もしかしたら  き、きすとか




「す、するわけないよねー…」




なにかんがえてんだろー…。

にしても、ああいうのは心臓に悪いからやめていただきたい…。










人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -