11月29日。
ラメ入り315円の赤ペンで丸をつけられた本日は私の愛しのダーリン…
ではなく、同居人の誕生日である。

それに気づいたのは1ヶ月前。
まだまだ先だと余裕こいていたら、気がついたら当日。
1ヶ月前の私の無計画さを呪いたい。
そして、あーだこーだしているうちに時は過ぎ、夜になってしまった。
官兵衛が帰ってくるのは夜の7時。
プレゼントはないがとりあえずは、と二人で食べるには十分すぎるくらいのご馳走を作っておいた。
多分、官兵衛が食べてくれるから余ることはないだろう。

しかし、このご飯がプレゼントよ!というには…残念すぎる。
私は家にあるもの、すぐにコンビニなどで用意できるもので、プレゼントを用意できないかを考えた。

手作りマフラー?時間が足りなすぎる。
肩叩き券?いやいや、小学生じゃないんだから…。

ラッピング用のリボンをくるくる指に巻きながら考えるが、いい案が全く浮かばない。
恋人だったら、裸リボンで「私がプレゼントよ(はあと)」で済むんだけどな…。

と、そこまで考えていい案を思い付いた。
恋人じゃなくたって構わないじゃないか!
今日1日は言うことを聞きます!雑用なりなんなり押し付けて!
よし、これでいこう。
大谷さんや毛利さんとは違うから、官兵衛が死ねだの這いつくばって頭を垂れろひれ伏せなど言うとは思えない。
ビール買ってこい、程度だろう。
と、いうことで私はそそくさと頭にリボンを巻き始めた。






そして7時。
予定通り官兵衛は帰宅した。
ただいま、といつもの低い声で帰りを告げ、革靴を並べて脱いでいる。

「おかえり官兵衛!誕生日おめでとう!」

バッ、と両腕を広げて官兵衛を迎え入れる。
当の本人はきょとん、としていた。


「…今日小生の誕生日か!!」


忘れていたらしい。
もしかして、言わなければ忘れたまま今日というすばらしい日を過ごしたんじゃ…。
大谷さんや毛利さんは教えるどころか覚えてないだろうし…ああ、きっとプレゼントも貰ってないんだろう。
哀れ、失敗男。


「で、名前は何かくれるんだろう?」
「あーうん…それなんだけどさ…」

物理的にはないんだよね…というと、官兵衛は心底残念そうな顔をした。

「なんだ名前…小生のような失敗男にはやるものもないってか…?」
「い、いやそうじゃなくて!ほんと!祝う気はあった!けど時間がっ…」

必死におちこむ官兵衛を宥める。
うーん、さすがにこれは酷すぎる…。


「だ…だ、だから私をプレゼント!!なんちて!」


どーん!と自分で頭にへたくそに結んだリボンを見せびらかす。
官兵衛は帰宅当初のようにぽかんとしていた。



「っ名前、それは…」
「へ、返品は不可です取り替えも不可です」



「名前を抱いてもいいってことか?」




な、なんだってー?!


「ち、ちがっ」
「…違うのか?小生はてっきり奉仕でもしてくれるのかと」
「いや…そうじゃなく今日中は言うことを聞くっていう…」
「なら構わんだろう。な?」



ち、ちくしょう!!







happy birthday 官兵衛!




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