最近のカップルはキスやハグどころか、その先も当然するらしい。
「えっ、えっ」
「なにを狼狽えているんだ。」
かすがちゃんと雑誌の恋愛特集を見ていた時のこと。
わたしはある一文を発見してしまった。
『彼氏との初体験談!』
は、初体験というのは、やっぱりその先の話ということで、
そこには匿名で「彼氏とハジメテなのにホテルでしちゃった!超どきどき!」だとか、「彼氏の家にお泊まりしたときにやっちゃいました!」だとかの意見が書かれている。
か、彼氏の家、ホテル…。
「さ、最近の子はすごいね…」
「なに年寄り染みた事を言ってるんだ、お前も最近の子だろう。」
「そうだけど、さあ…」
正直、そのへんにはついていけない。
だって、わたし石田くんとちゅうも一回しかしたことないんだもん。
しかも石田くんから、突然。
「…石田も大変だな」
「えっなんで」
「考えてみろ、石田も男だぞ?そういうコトをしたくないわけがないだろう!」
どん!と机に握り拳を打ち付ける効果音つきで、かすがちゃんは熱弁する。
石田くんも男の子だから、そういうえっちなことも考えたりするのかな。
わたしと、したいって思ってくれてるのかな
「…や、やっぱり石田くん我慢してるのかな」
「え?」
「わたしが間抜けだからえっちしたくても雰囲気出なくて出来ないとか、それともわたしの体が貧相すぎてする気が起きないとかなのかな…」
後者だったらどうしよう。
わたし、かすがちゃんや雑賀先輩みたいにおっぱい大きくないし、
石田くんもおっきいおっぱいがすきなのかな
「いや、石田に限ってそれはないだろう」
「えっなんで?」
だって、他に見当たらない。
かすがちゃんの返答を待つように彼女のきれいな顔を見る。
「多分、お前が大切なんじゃないか?」
わたしが、大切?
「初めてキスしたとき、拒んだか?」
「えっと、」
「なにか石田に言ったか?」
「んー…『突然なにするの』って、言った」
「多分、キスを拒否されたと思ったんだろう」
え、
衝撃の事実に体の動きを一瞬全て止める。
わたしがそう言ったのは恥ずかしさからであって、決して石田くんからのキスが嫌だったとかじゃない
けれど、いい方が悪かった、のかな。
「わたし、石田くんともっと近づきたい。ちゅうも、いつかはその先も」
「その意気だ!」
「うん!じゃ、じゃあ今日ちゅうしたい、って言ってみるね!」
「え」
「あっチャイムなっちゃう!じゃあ教室戻るね、じゃあねかすがちゃん!」
「なんかちがうぞ…」
その後、ちゅうしたいといった私を石田くんが真っ青と真っ赤が混ざったような顔で保健室に運び込んだのはまた別の話。