隣のクラスの石田三成くん、かわった人だけど、そんな彼に惹かれるようになったのはいつからだったか
この儚い恋心が実るとは全く微塵も思っていなかったけれど、わたしはいま幸せの絶頂にいる。
「い、石田くん」
「どうした」
「う、ううん。待たせちゃってごめんね」
「構わん」
わたしと石田くんが交際を始めてから、わたしたちは普通、二人で下校する。
けれど、いつもわたしのクラスのホームルームが長いせいでいつも石田くんを待たせてしまうのだ。
担任の先生のどうでもいいにもほどがあるような無駄話というか、なんというかその場を盛り上げるのが上手で人気のある先生なんだけれど、最近はそういう点ではあまり先生を支持していない。
きらいなわけじゃなくて、もうちょっと帰りたがっている生徒の気持ちを汲み取ってくれないか、その程度。
そんなわけで、今日も教室前で石田くんを待たせてしまった。
石田くんは、やさしいから怒らないけれど、なんだか申し訳ない。
表面には見えないけれど、心の内側ではブチ切れかも、と考えたのも一度ではなかった。
上履きからローファーにはきかえて、校舎を出て、石田くんにとあることを話してみる。
「あ、あのね石田くん」
「なんだ」
「えっと…、最近近日に新しいクレープ屋さんが出来たんだけど、」
一緒にいってみたいな、なんて意味を込めて言ってみる。
けれど、
「…下校中の買い食いは校則で禁止されている。」
「あっ…うん、そうだよねごめんね」
石田くんは校則にきびしい。
まあ生徒会だから当然といえばだけど、すこしくらいは許してくれたっていいんじゃないかなあ。
カワイイ彼女のオネガイ、なんて言わないけど。
たまには、石田くんといちゃいちゃ、してみたい。
わたしがしゅん、としていると、石田くんは難しい顔をして口を開いた。
「ただ、」
ただ?とわたしは高い位置にある石田くんの綺麗な顔を見上げる。
「下校デートを、禁止する校則は存在しない。」
と、真っ赤な顔をして石田くんはわたしの小さな手をぎゅっと強く握りしめた。
「そのクレープ屋は何処だ。」
「あっ、えっと、商店街!」
「ならばいくぞ」
「うん!」
ああ、だいすきいしだくん。