彼女はとても小さい。
そりゃ、俺からしたらだいたいの女の子は小さくみえるけど、彼女は特別小さい。
普通の背の人からも小さいと言われるくらいに。
それでも、彼女はひとより大人っぽかった。
自分と同い年なのに、てきぱきとなんでもこなしてしまう。
委員長、文化祭の実行委員、学年代表。
普通は全部違う人がやるはずだったのに、全部彼女に押し付けられた。
俺ならすぐに嫌だ、って投げ出すのに、彼女は笑っていいですよ、と言う。
忙しいのに。
それだけ兼任しておきながらちゃんとバスケ部のマネージャーもこなす。
桃チンもすごかったけど、名前ちんも違った意味で凄いと思う。

いつみても笑顔で、忙しなく働く彼女。
プリントなくしちゃったんだけど。
じゃあ私がコピーしてくるね。
この書類の期日って何日?
来週の水曜日だよ。

何でも彼女に頼るクラスメイトに苛立ちを覚える。
そんなに名前ちんばっか頼ってないで、少しは自分ですれば。
でも、そんなこと言っても彼女は喜ばないんだろう。
なにを頼まれてもいつだって笑顔で答える。
そんな彼女なんだから。






「ねえ名前ちん」

誰もいない放課後の教室。
本当なら真っ先に体育館に向かってバスケしにいくけど、今日は彼女が日直だったから待つことにした。

「んー、なに?」

日誌を書く手を止めずに、彼女は俺に返事を返す。
声色はいつもとかわらない。

「つかれない?」

そんな小さな身体にそれだけの重荷を背負って。

「うん?つかれてないよ?」

嘘なんだろうか、それすらも見抜けないくらい彼女は笑顔がうまかった。

「じゃー、俺が代わりに疲れてあげる。」

「…え?」

日誌を書く手を止めて、こちらを向く。
俺は机に突っ伏して口を開いた。

「だるい、めんどくさい。プリントのコピーなんて自分でして。書類の期日も自分で調べて。私は忙しいからその仕事は出来ません。」

「え」

「名前ちんが思ってること、代わりに言ってあげた。」
「そんなこと、」
「別にこれくらい言ったって誰も怒らないよ」
「…」

彼女の手は止まったまま。俺は彼女に近づき、頭を撫でた。

「名前ちん、こんな小さいのに、そんなにしてたら潰れるよ」


直立して並んだら30センチ物差し2つが必要なくらいの身長差。
それに比べて、彼女は今座っている。
彼女の頭はいつもより下。
腕を曲げなくても、長さは余らなくて、小さいなあとあらためて実感した。







111020



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -