「名前ちん、くすぐったい。」


紫原くんのサラサラの髪に指を通す。
私の髪は大して綺麗ではないから、彼の髪が羨ましかった。


「ごめんごめん、でも羨ましいんだって。」
「むー…」


まいう棒を口にくわえつつ、不機嫌にしながらも私の手を振り払わない紫原くんは優しい。
本当に嫌だったら無理にでも離れると思うし、彼ならそんなことしなくても立つだけで私の手は頭に届かなくなるんだから。


「いいなー…」

「そんなに俺の髪が好き?」
「うん」
「じゃあ俺のことは?」
「普通」
「アララ」

まいう棒(芥子マヨネーズ味)を食べ終わった紫原くんは、新しいまいう棒に手を伸ばし袋を開ける。
これで何本目なんだろう。
さっきから随分食べているように見えるんだけど、駄菓子屋の紙袋の中のお菓子たちが無くなる気配はない。


「名前ちん、俺は名前ちんのコト好きだよー」
「ありがとう」
「名前ちんは?」
「普通。さっき言ったじゃんか。」
「やっぱりー…?」


落ち込むー、と言葉に反してその素振りも見せずまいう棒(今度は牛丼風味)にかじりつく。
彼は私のことを好きだというけれど、それが彼の本心であるかはわからない。
彼と仲良くなってから、かなり経つけれど未だに何を考えているのかが全くわからないからだ。
まぁ、大方眠いだとかお菓子のことしか考えてないと思うけど。


「紫原くんが何を考えてるかわかんない。」
「そうー?」
「うん。今だって、何で私のこと、」
「それは好きだからだし。」
「…うん。」
「俺が考えてることなんてお菓子のことか名前ちんのことくらいだよ。」
「そうなの?」
「うん。」

俺名前ちん大好きだから。
本心かどうかはわからない。
けれど、彼の横顔が余りにも儚げだったから。


「紫原くん、私きみのこと割と好き、かも。」
「割とは余計」






何がかきたかったのか
111023



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