もういやだ。




アーサーは国である。

そして、私も国である。

国が、普通の人間以上に忙しいのは知っている。

そして、他国との交流が必要であることも、重々承知だ。



…でも。



アーサーの上司、あいつはないんじゃないか。

だって、アーサーに私という恋人がいることを知っているにもかかわらず、いわゆる風俗みたいな店に誘うんだから。

他国の上司と、アーサーの上司と、アーサーと。

あんたらには長年連れ添ってきて若干飽きてきた妻しかいないんだろう。

けど、アーサーには私という自分で言うのもなんだけど、そこそこかわいい彼女がいるのだ。

バカアーサー。ばかぁ!じゃないよ本当に。

眉毛を毟り取ってやろうか。

私にはもうイヴァンとかアルフレッドとかフランシスとか、いろんな人から姉妹提携の申告とかいろいろ来てるんだから。

それにはいくな、って言うくせに、なんなのよ。最低!!



…てなわけでふることにした。







「…は?」

「だから、分かれる。今決まってる話は全部お断りします。」



…俺はわが耳を疑った。


俺がいないとなんにもできないと思っていた彼女が突然分かれるとか言い出すのだから。


「なんでだよ?」

「自分の胸に手を当てて考えて見れば?じゃあね。私自慢じゃないけど相手にしてくれる国はいっぱいいるの。」


サヨーナラ、とひらひら手を振って去っていくレンナ。

いやいやいや、それはないって。

俺…何かしたか?

コイツには割りと紳士に対応していたはずだし、昔の血が騒いで無理やりヤったりすることもなかったし…。

今まで女と別れたときのようなナニカがない。

ていうか、コイツ…相手にしてくれる国、って…

まさか俺に秘密で…いやいや、そんなはずは…

でも最近やたらアルフレッドに絡まれてたよな…?

そんな…いやいやいやいや、ないだろ。こんな色気のかけらもない女…。




「…あのさ、全部口に出てるからね」

「…まじか、」

「まじ。」




「色気なくて悪かったね!
でもアルは私にキュートだって言ってくれたから!
あんたみたいなエロ大使よりかは幾分かマシよ!
イヴァンにもレンナといるとあったかいよとかかわいいこと言われたんだから!
フランシスも普段はアレでもアンタのことで相談したときとかすごい紳士だったから!あんたと比べモノになんなかったから!
アントーニョだって昔はあんなだったけど、今はすごく素朴でよくトマトくれるのよ!
あんた、全部知らないでしょう!」


だからわかれる!!


最後ぐらい俺の魅力ぐらい言ってくれたってよかったんじゃないだろうか。

ほら、「キミはやさしかったけど、私はもっと束縛してほしかったな」みたいな。


「誰が束縛してほしいもんですか。むしろされまくりだったんだけど。」

「…………。」


「アーサーあんた頭おかしいわよ。なんで気づかないの。気づいたら思いとどまってやろうと思ってたのに!」


最低!と再びはき捨ててまた立ち去ろうとする。

なんなんだよ、別に、女と別れても…そんなに、いや、ちょっとも…、傷…つくことは…あんまり、ないけど。

でも…なんかむしゃくしゃする!


「なんも言わずに別れんのは気分が悪いだろ!」

「それはアンタだけ。私はなんとも思わない!!風俗でヤって性病にかかって一生ソレ使い物にならなくなっちゃえ!!!」




…風俗?




「…誰がいつ風俗にいったんだよ。」

「しらばっくれないで。上司と行ったんでしょう。知ってるわ」

「は?だからいつだよ」

「最近!こないだ某国との交流でいったんでしょ!」


レンナは知ってる!といってまたそっぽを向いた。

いや、いみわかんねえ。


「いってねえよ」

「うそつかないで!」

「いく必要ねえよ」

「あるんでしょ!」

「途中で帰ってきた。」

「うそ!」



…何を言っても信用しないのか、

俺は頭を抱えた。



「なんで、そんななんだよ。」

「…なにが。あんたが悪いんでしょう」

「俺は確かに上司に誘われたけど、すごく誘われたけど、普通に帰ってきた。」

「………。」

「もしもほんっとに信じられなかったら上司に聞いてくれてもかまわない」

「…………でも、」

「俺は、そんな暇じゃない。」




「………いみわかんない」





抱きしめたら、なんだか違う感じがした。

俺はなんであんなに弁解したんだろう。

いつもの女なら別にそうか、といって別れていたのに。




「…ああ」




愛してるのかもな








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