午前1時。
お兄ちゃんは寝たし、私のことも寝たと思ってる。
草木も眠る、深夜。
窓越しに藍がかった黒い空を眺める。
微かに光る星の瞬きを眺めているとなんだか自分がロマンチストみたい、なんて。
そんなことを考えていると、開かないはずのドアが開いた。
「おい」
振り向くと、兄貴の腐れ縁のアイツ。
私が待っていた、
アイツ。
「…アーサーさん」
夜中にも関わらず、カッチリと着込んだスーツは、彼の几帳面さを表したようだ。
チェックのネクタイは私がプレゼントしたもの。
「なんだよ、ロマンチストだな。」
「知ってるよ。」
「可愛くねえな」
「そんな私に惚れてるのは?」
「俺だよ、ばか」
するりと私の指にアーサーさんのそれを絡めて、ベッドへ身を沈める。
ベッドのギシッというスプリングの音を聞いたアーサーさんの口端がにやりとつり上がった。
「エロ大使」
「言ってろ」
額から瞼、唇、首筋、胸と落ちるようにキスの嵐を降せる。
胸までたどり着くと、それは唇に戻り、私と彼の舌を絡めた。
気の遠くなるほど長い長いキス。
銀糸が私たちを繋ぎ、細くなって切れた。
「下手くそ。それでもフランシスの妹かよ。」
「うるさい。私は遊び人じゃなくて一人の人に捧げるの。」
「それが、俺か?」
「光栄に思いなさい」
「全くだ。」
キャミソールの中に手を突っ込み、背中を撫で回す綺麗な手。
今度は私から口付ける。
キスの最中でもアーサーさんの手はとまることなく、私の肌を這い続けた。
胸にたどり着いた手は、やわやわとそれを揉みあげ、飾りで遊ぶ。
形を変えるそれは、自分でいうのもなんだがアーサーさんと出会う前より大きくなっている気がする。
アーサーさんは突然キャミソールの下から手を引っ込め、ハーフパンツに手を伸ばした。
「ちょ、やめてよ」
「なんだよ空気読めよ。」
アルじゃあるまいし、と呟いて、アーサーさんの手がそれを膝まで降ろした。
ねっとりとした視線が私の足に絡み付くのを感じたので、蹴りをいれてやった。
「…なんだよ」
「なにもない。」
「…。」
罪滅ぼしのように優しいキスをして、再び下に手を伸ばした。
「…ぁ、」
「そんな声出すなよ…。」
何度も何度もキスをして、だんだん下の手が疎かになってくる。
それを私は見切った。
「キャー!アーサーに犯されちゃうー!」
「?!」
ピタリ、とキスが止んだ。
ドタドタと足音がして、盛大にドアが開かれる。
私に馬乗りになるアーサーさん。
勘違いもなにもない。
「アーサーてめーお兄さんの妹に手ェ出すとか死にたい?」
「はあ?!お前に負けるわけっ…つか、名前!」
「やーん助けてお兄ちゃん。アーサーさんにアンナコトされちゃったー」
我ながら見事な棒読みであるが、シスコンなお兄ちゃんはそれをものとせず、アーサーさんをフルボッコにするだろう。
それでもいいのだ。
これが今の私の贅沢。
I love you!But,I love my brother too!They love me!
=あいしてる
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