皆さん、ポッキーというお菓子をご存知だろうか。
いや、今の現代社会における学生及び社会人でその名を聞いたことのない者のほうがすくないんだと私は認識している。
それは棒状のビスケットに上からチョコレートをコーティングした食べやすさとおいしさを兼ね備えたすばらしいお菓子だ。
最近では秋のデコレーションムースポッキーという栗や芋の味のおいしくてちょっと豪華なポッキーが発売されている。

いや、ポッキーの話はここまででいいだろう。

目の前の男は、そのポッキーを握り締め、真っ赤になって俯いていた。


「…アーサー。」

「っ…!」


目の前の男―アーサー・カークランド。
一応私の恋人と呼ばれる立場の男である。
そして、顔立ちはすばらしく美麗、英国紳士と呼ばれる立ち振る舞いで、学園中及び教師らからも絶大な人気を持つ男だ。
バラの花のような優雅な笑顔が素敵だと、通りすがりの女子生徒が言っていたが、今の彼は優雅なんてもんじゃない。
バラといえば赤だろう。そのくらいに真っ赤に染まった頬は、どちらかといえば「かわいい」と称される。


「あのさ、いい加減にしてくれない?」


まぁそれも、少しの間だったらの話であって、こうも長い間俯き真っ赤になられていたんであってはこっちだっていらいらしてくる。

そんな意味を込めてちらりと視線をやれば肩をびくっと震わせて目を合わせた。


「…なぁ、名前」

「なに?」




「………ポッキーゲームを、してくれないか?」




バレンタインにチョコレートを渡すようなしぐさでポッキーの箱を自分にむけて、頭を下げたアーサーは、確かにそういった。

ポッキーゲームをしてくれないか、と。


ポッキーゲームというものをご存知だろうか。
デジャブを感じるだろうがそこはスルーをしていただきたい。
それは主に若い男女が、お互いポッキーの両端に口をつけ、さくさくと食べ進めていく遊びだ。
先にポッキーを折ってしまったほうが負け、だったとおもう。
これの何が面白いのかといえばお互いが食べ進めていくとポッキーの量は当然減り、二人の唇の距離が近づくということだ。
このまま食べ進めていけばキスしてしまう。
それを避ける為に折れば負け。
そういう複雑なゲームだ。

これを、アーサーは頼んできた。



「…は?なんでまた。」


「あ、その、いや…。」



アーサーは目線をそらしてポッキーをさらに自分におしつけた。

仕方なしに箱を受け取ってパッケージをみた。



『毎年11月11日はポッキーアンドプリッツの日!』



カラフルな色でそうかかれていた。






「…アーサー?」

「あ、その、だな。菊が、恋人同士ならこういうことぐらいしてみればどうだ、って…言って。」

「…本田さんが?」


…本田さんめ、同人ネタを集めるためだろうけど…。



「で、でも俺もこういうことが…したくないわけじゃなくて、で、でもおまえが…そんなにも、嫌がるんなら…」

「…べつにいいよ」


ふぅ、私はため息を吐いた。


「え」

「…まぁ、恋人らしいことなんて今までそんなしたことないし。」


ここは、本田さんに一応お礼を言っておこう。



「ほんとうか!?」

「うん」

「っ!」


アーサーは珍しく子供のような笑顔で笑った。

こんな顔もできるんだな、なんだか見ほれてしまった。





「じゃ、じゃあベッドに――」






「……は?」



気が付けば私は所謂お姫様だっこというものをされていて、こんな細腕のどこに力があるんだとか思いながらベッドに運ばれていった。



「…ちょっとまて。」


「ん?どうした?するんじゃないのか?」




なにか、ちがう。




「ポッキーゲームごときでなんでベットに…」


「は?当然じゃねえか。ポッキーゲームってナカにポッキーいれて溶かすゲームだろ?」


「……は?」


「さ、やろうぜ」





本田、後で殺す。












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