天気予報が嘘をついた。どしゃ降りの雨が降る。




わたしの耳に流れる曲。
わたしが一番好きな曲だ。

この歌詞の続きには、鞄に入れたままの折り畳み傘嬉しくないと続くのだがどしゃ降りまでは当たっていてもわたしの鞄の中には傘なんてなかった。

だからと言ってしょうがないから入ってやるなんて言えないし、濡れて帰るしかないのか。






「しかたな…」「ねえ」





後ろから低音ともいえぬ透き通るような声。

表現するならまさに氷のような、
つんざくような、




「イースじゃん。何?」





振り向いた先にいたのは幼なじみのイースだった。

彼の手は雨の中飛び出そうとするわたしの手をつかんでいる。

ざあざあと降り続ける雨の中、傘を持った生徒たちが玄関から出ていく。

私たちは完全においてけぼり。



「意味分かんない」


「は?」



イースはわたしの目を見ずにずっと斜めしたに俯きながらぶつぶつ何か言っていた。

わたしには聞こえないので、さっきの意味分かんない発言とあわせて意味分かんない。

意味分かんないのはこっちだよ。



「名前って、ばか?」


「は?」



やっとこっちを向いたかと思えばコレ。

意味分かんない。え?ばか?

お前がな。



「雨のなか走り出すとか、ばか。」


「いや傘ないし。あとばかって言い方微妙にかわいいんじゃねえ。」


「…。」



イースは俯いてまたぶつぶつ言う。

ほんとわけわかんない。




「だから、その」


「なに」


「………………る。」


「は?」




イースは小さく呟いた。
だけどほんとに小さく。
それこそわたしに聞こえないくらいの音量で。







「…っ、かさ、いれたげる!」







真っ赤になったイースは水色の傘を差し出して、逃げた。

いれたげるって言ったくせに敵前逃亡かよ。へたれ。








(意味分かんない意味分かんない意味分かんない意味分かんない意味分かんない……。)



メルト






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