俺が生徒会の仕事を終えて、ようやく生徒会室を出た。

アルフレッドも、フランシスも仕事しねえからいっつも俺がやらなきゃいけなくなる。




「アーサー!」



突然誰かが俺を呼んだ。

あたりを見渡すと、俺の彼女―名前がにっこりとした笑顔でこっちにやってきていたのだ。

相変わらずの短いスカートを揺らして走っている。

おい、そんな走るな。中見えるだろ。

い、いや、俺は別に見てないからな!!!

ほ、ほら!カリエドの野郎がガン見してるじゃねえか!あとバイルシュミットの兄のほう。

見るな、という意味を込めてそいつら二人をにらみつけて、俺に突っ込んできた名前の背中を抱えた。

こいつは背が小さいから俺の胸あたりに顔がくる。



「なんだよ、そんな走るな。」

「えへへ、だってアーサーがみえたんだもん!」


にっこりと、無垢な笑顔を浮かべて名前は言った。

その妖精のようなかわいい笑顔に、ガラにもなくそれだけで顔にほてりを覚える。

コイツと付き合ってから、コイツを見るたび、俺が俺じゃないみたいだ。


「どうしたの?顔…赤いけど…?」


熱ー?なんて言って上を見上げて覗き込んでくる名前。

俺の額に手を当てたりして。かわいいな…

ていうか、こんなこと友達とかにやってねえよな?!

顔が近いだろ!


「だっ…大丈夫だ。」

「そう?ならいいんだけどねー」


またえへへ、と名前は笑った。

癖なのか、よくコイツはスカートを舞わせてくるくると回る。

そういやもともとコイツの国は、ダンスで有名な国だったよな。

そのせいもあるのか、こいつはやたら短いスカートでくるくる回ったり猛ダッシュで走ったりする。

男共はそのときにハラリとめくれるスカートを心待ちにしているのだ。死んで来い。


注意してもやめないことは目に見えているが、一応、彼氏なんだしと、何十回目にもなることを言う。



「あんまりはしゃぐなよ。スカートの中身見える」

「えー、やだ!アーサーえっち!」


…えっち、って。

そういうことをいちいち言うからだめなんだろ。だからかわいいんだ。

俺知ってるぞ、こないだアルフレッドに告白されたんだろ。

私の恋人はアーサーしかいないもん!って言って断ったのは知ってるけど…。

やっぱり恋人としては心配な限りだ。

自慢じゃないけど、俺の弟なんだ。

最悪の場合、無理やり監禁とかも…

いや、あいつの国は人権とか重んじてるから大丈夫か…?

でもな、カリエドが昔の血が騒いだりして…――




「…名前」


「え?なぁに?」



妖精さんみたいにふわふわした笑顔でコイツはいつも俺を見る。

俺はそっと、こいつを抱きしめて言った。




「どこにもいくなよ、」




名前は顔を真っ赤にして俺の背に手を廻した。




「どこにも行かないよ」




ああ、このまま時がとまってしまえばいいのに、なんて。




(あーうらやましくなんかないぜー)(プー、涙でてんで)








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