朝8時。
私は定期券で、ほぼ毎日乗っている電車に乗り合わせていた。
「…?!」
満員電車のドア側にいた私に、異変が起きた。
スカートの中に…、手?
下着の上から私の尻をなで回してみたりしていたその手は、下着の中にまで侵入してきた。
やばい、声が出ない。
いつぞやにエリザが痴漢をされたことがあったと言っていた。
その時も声が出なかったらしく、結局はローデリヒさんに助けてもらったらしいが、生憎私にはそんな素敵な王子さまは居ないのだ。
「…っ」
変態に下半身を触り回され、声も出ず、ただただドアの横の縦式バーを握る。
私が降りる駅まではあと5つ。
それまでからだを許さなければいけないのか…。
「…ん、ぁっ…んぅ…」
こんな変態に感じてしまう自分が気持ち悪い。
いやだ、いやだ、いやだ。
「っ…!!!」
誰か、助けて、誰か…っ
「この変態っ!!」
…?!
高くて明るくてよく通る声がした。
私の声じゃない。
いつかに聞いたことのある…。
「あ、るふ…れっど。」
「ホラ!出るんだぞ!変態!アーサーよりも変態じゃないか!」
気が付けば痴漢の腕をギュッと力強く握るアルフレッドの逆の手に私のそれがつながれて、降りるはずじゃない駅で降りることになってしまった。
「…大丈夫かい?」
駅員さんがやってきて、痴漢が取り押さえられたあと、冷房の聞いた部屋の中に駅員さんに連れられた私とアルフレッドは、痴漢と話をしている駅員さんが戻ってくるまで話をすることになった。
学校に少し遅れると連絡をいれてもらって、出して貰った麦茶を口に含んだ。
「…なんで、助けてくれたの?」
私とアルフレッドは、面識すらあるものの、親しい訳でもない。
むしろ私は地味で、彼は派手。
真逆で対になったような存在なのだ。
「俺はヒーローだからな!」
キラキラした笑顔を親指をたてて放つ。
キラキラキラキラキラキラ。
見てるこっちが眩しいくらいの純粋さを、あの変態痴漢野郎に分けてやりたいとすら思った。
「ま、それは建前なんだけどね。」
「…え?」
何処からか、ハンバーガーを取り出してもぐもぐ食べ始めた。
いるかい?と一口分食べられたハンバーガーを向けられたが、丁重にお断りした。
「すきな子が困っていたら、助けなくちゃいけないだろ?
子供の笑顔でアルフレッドは言った。
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