ニュースで知った。もうすぐ地球がなくなるらしい。月が落ちてくるんだそうだ。急な事実に、世界は大混乱だった。最近、やけにクラスメイトが優しかったり話しかけてきたりするのもそのせいだったのか。だから告白するひとがいっぱいいたのかもうすぐ死ぬんだから、いまの内に青春を楽しまなきゃみたいな。私も3人に告白された。純粋に、3人の人間に好かれていただなんて。そんなことに幸せをかんじた。地球最後と予測されているその日は、授業がない。友人と最後の別れだ。午後からは家で家族とすごす。最後の瞬間を。私にはあいにくながら家族がいない。事故死だ。つまり、わたしは孤独なまま死んでいかなければならないのだ。ああ、いやだなあ。どうせなら告白してくれた人と終わればよかった。あした、あした。明日がその日。地球最後の日。急な話だがしかたない。地球の最後は太陽の最後で飲み込まれるときだと思っていたが違ったようだ。漫画でよくあるよなあ、月が落ちてくる、って。漫画の世界に入り込んだみたいだ。さようなら、最後の時。明日わたしは永遠の孤独になる。
地球最後の日がきた。わたしは学校へむかう。友人も知らない人も先生も涙をながしていた。教室で友人たちに別れを告げた。さようなら、来世もなにもないけれど。またあいたいな、なんて。私を好きだったらしい子に抱き締めていいですか、と聞かれた。最後だから、と私は許可したら、その子は涙ぐんでだいすきだよ、と言ってくれた。
世界が終わるときが刻々と近づいている。私はなにをするでもなく学校にいた。家族、いないし。どうせなら、最後なんだしと、やりたいことをやることにした。職員室に我が物顔で入ってみたり生徒会室でふんぞりかえったり。最後に、最後に、屋上から叫びたい。
月は見えていた。あんなに大きな月。だんだん大きくなるみたいだ。やっぱり月が近づいてきている。死ぬときは痛いのかなあ。いやだなあ。屋上のドアをあけると先客がいた。生徒会長だった。
「…カー、クランド」
「おう」
なんでここに、本田とかジョーンズとかと過ごすんじゃないのか。なんで、なんで。私の屋上での目的をはたせないよ。
「なんでいるんだって顔してんな」
「あたりまえ。ジョーンズたちは?」
「あいつらは望みの死に方を選んだ。そして、俺も。」
「屋上で一人で死ぬのが夢?」
「一人じゃなくてお前とだ。」
お前と世界の終わりをみたいんだ、カークランドはいった。私はそんなの望んでないが、まあ美形と死ぬのなら一人で死ぬよりましだ。私はカークランドの横に座り込んだ。
「月、ちかいね」
「ああ」
「私が来なかったら一人で死ぬつもりだったの?」
「お前がくるとおもってた。」
沈黙、
カークランドは遠くの月をながめている。もうすぐ終わるのだろう。
「…すきだ」
「………また突然」
「わるいか」
「べつに」
カークランドの横から腰をあげ、フェンスによっかかる。ぎしり、と音をたてたそれにからだをあずけ、叫んだ。
「お月さまの、ばかああああ!」
世界が終わるまであとすこし、月がおちてきた
カークランドはなにをおもったか私を抱き寄せキスをした。はじめてだ。やさしいキス。
月が、月がおちてくる。
「あいしてた」
カークランドが呟くと、世界が終わりをつげた。
世界の終わりにはなにがあるんだろう。