籠を持ってふらふらと歩いているかと思えば、確認するのもめんどくさいくらい小さな石ころにつまずいたり、自分から進んでやろうとしたくせに洗濯物を全部溝に落としたり。
そいつを見ていると、時間を忘れたような感覚に陥ってしまう。
「…これが、ドジっ娘ってやつ…か?」
俺はグラウンドの真ん中でつぶやいた。
豪炎寺!と自分を呼ぶ声がする。
どうやら自分にパスが回ってきたようだ。
うかっかりぼーっとしてしまった。
「あ、ああ!」
「豪炎寺」
さらさらの青い髪の持ち主、風丸は、ドリンクを飲んでいる俺に声をかけた。
タオルを首にかけているそいつのほうを向いて、なんだと言葉を使わず答える。
「おまえ、名字さんに見とれてたな。」
女顔負けの綺麗な笑顔で風丸は笑っていった。
見とれる?名字―あいつに?
「違う。俺はアイツがヘマしないか…」
「でもぼーっとしてたじゃないか。違うのか?」
「そういうわけじゃ…」
照れんなよ、と肩をとんとん叩かれて俺は意識を過去に戻す。
おぼつかない足取りで籠を運ぶ姿を見て、俺はどう思った?
手伝ってやりたい、って思った。
溝に脚をとられて転びそうになったとき、俺はどう思った?
駆け寄って支えてやりたいと思った。
ほらみろ、見とれてなんか―――
「豪炎寺、重症だな。」
「…なにが、だ。」
だってほら、風丸が言った。
「あの子のこと考えてたら、顔緩みまくりだぞ。」
やばい、自覚した。