私は周りより少し勉強ができて少し親がおかねを持っているだけの普通の学生だった。
名門と呼ばれる帝国学園に通っていて普通と言うのもおかしな話だが、勉強も将来の為にして、休み時間は友達と仲良く談笑。
好きな人もいるし、恋バナだってすき。
休みの日には友達とウィンドウショッピング。
そんな普通の女子中学生。
そして、そんな普通の中学生成りに、一生分の勇気を振り絞って告白した。
相手は鬼道有人。
随分なお坊ちゃんで、サッカー部エース。
頭脳明晰で日本でも有名な中学生サッカー選手。
そんな彼に私のような普通の子が告白するのも、なんだか変な話であるが、やっぱり好きなものは好きなわけで、斜め後ろの席が彼になってからだんだん好きを自覚していって、そして、友達からの励ましもあり告白するに至った訳だ。
言葉は屋上で
「好きです」
という至って普通の言葉。
サッカー部エースにあまり時間をとらせるわけにも行かなかったからストレートに。
返事は、あまり知らないからとNOだったが、私はあまり悔いていなく、むしろこれから知って貰えばいいとか、好きな気持ちを知ってもらえたとか、そんな満足感もあったからか、私は潔く引き下がることができた。
中学校での甘酸っぱいいい思い出になったと思う。
彼が去ったあと、私は暫く屋上でぼうっとしたあと、友達の一人に「ふられた」とメールして屋上をあとにした。
教室で待っていた友達は、私が泣かないからと代わりに泣いてくれたり、頑張ってと励ましにお菓子をくれたりと、私が失恋で落ち込んでいると思ったのか、私に優しくしてくれた。
とてもいい友達。彼女らと仲良くできる私は幸せ者だ。
告白事件(?)があったあと、暫くは何事もなく日々が過ぎ去るだけだった。
遊んで、部活に疲れて、時々鬼道くんを見てどきどきして。
何事もなかった。
だけどある日。
「名字。」
低くてかっこいい声で、私の名を呼び止められた。
振り向くとそこには、源田くん。
確か、鬼道くんが見たくてこっそりサッカー部の試合を見に行ったときに目があったんだっけ。
あのときはびっくりしたなあ。
「えと、源田くん。なに?」
いつになく真面目な表情。
背の高い源田くんは、私を見下ろすように見ていた。
「こんなときに言うのは、卑怯だと思う。」
主語のない不自然な言葉。
なにが、と問いかけるまえに源田くんの答えは帰ってきた。
「好きだ。」
彼は「傷をえぐるようで悪い」と付け足した。