少し特殊なお話です。
・『叛逆の物語』盛大なネタバレアリ
・映画未鑑賞の方は閲覧注意
・女主でほむら→まどか←主人公
・まどか←主人公は百合ではないつもりです。






















アメリカから転校生が来た。桃色の二つ結びのかわいい小さい女の子。
名前は鹿目まどか。
その可愛らしい容姿にとてもよく似合う可愛らしい名前だった。
かわいい、お友達になりたい。
控えめな笑顔からは彼女の優しさが溢れ出ている、そんな気がした。

何度も話しかけようと思った。お昼ご飯でも誘おうかと思った。
でもそれは叶わなかった。
暁美ほむらさん、彼女が常に鹿目さんについて回っていた。
まだ校内がよくわからない彼女に熱心に道案内をして、勉強でわからないところがあれば教えてあげていた。
お昼も彼女が独占していて、時々鹿目さんが一人の時に話しかけてもすぐに彼女は飛んできて、私を突き放すのだった。

最初は鹿目さんが私のことを実は苦手で、だから気の弱くない暁美さんが代わりに言っているのだと思っていた。
しばらく経つと、それは違うことに気づいた。
鹿目さんは嘘がつけない。顔を見れば何を考えてるのかすぐに分かってしまう。
僅かな時間だけれど、私と話している間はすごく楽しそうに笑ってくれた。名前ちゃんは面白いねとも言ってくれた。
暁美さんに話を中断された時、本気でさみしそうな顔をしていた。
暁美さんを見上げて、暁美さんの綺麗すぎる笑みを見て怯えたような顔もしていた。
だから思ったんだ。本当は彼女、暁美さんのこと好きじゃないのかも、って。

「鹿目さん、ちょっといい?」
「名前ちゃん!うん、いいよ」

暁美さんが先生に呼ばれている隙に、私は鹿目さんに話しかけた。
ぱっと花が咲くような笑顔は、いつ見ても癒される。
でも今はそんな場合じゃない。
暁美さんがいつ帰ってくるかわからないから、手早く済ませなきゃ。

「鹿目さんてさ、暁美さんのことどう思ってる?」
「え、」
「…いやその、いつも一緒にいるから、すごく仲良いのかな、なんて」

二人の間には入る隙もないよね。
そう言うと鹿目さんは少し悲しそうに俯いた。
そんな顔をさせるつもりはない、と鹿目さんの顔を上げさせると、眉を下げた笑みで「おかしいの」と言った。

「ほむらちゃんはね、いつだってわたしのためになんでもしてくれるの。
転校して、初めて知り合ったのにね。ずっと前から友達だったみたいにしてくれるんだよ。
それはすっごく嬉しいの。わたし、友達作るのあんまり得意じゃなかったから。
でもね、時々思うの。わたし、ほむらちゃん一人に頼りすぎなんじゃないかなって。
本当は、もっとたくさんのひととお話ししてみたいなって思うんだけど、できないの。
美樹さんとか、佐倉さんとか、もちろん名前ちゃんとも、仲良くなりたいの。
ほむらちゃんはすごくいい子で、私のことを大切にしてくれる。でもね、わたし時々、そんなほむらちゃんが…変に思っちゃうの。
わたしだって一人でできることもあるし、ほむらちゃん以外のお友達とも仲良くなりたい。
このままじゃ、自分にできることもだんだんできなくなっちゃいそうで、怖いの。」

やっぱり鹿目さんは私のことを苦手なんて思っていなかった。
鹿目さんはやっぱり暁美さんのことは好きだと言ったけど、ほんの少し疎んでいることもわかった。
さやかと杏子、あの二人が鹿目さんを気にかけていたのも知っていた。私の予想は当たっていた。

「私ね、鹿目さんと友達になりたい。友達になりたいよ。さやかと杏子もね、鹿目さんと仲良くなりたいって言ってたもん。みんなで遊びに行こうよ。暁美さんがいつも鹿目さんのこと独り占めしてるから、誘い辛かったんだけど。」
「ほ、ほんとに?わたしも行きたいな、この街で遊びに行けるところわたしなにも知らないの。ほむらちゃんは美味しいケーキのお店を教えてくれたけど、もっとたくさんのところに行きたいんだ。」
「やった!じゃ、じゃあさ来週の日曜日とか…」
「名字さん」

冷淡な声がかかった。
振り向くと綺麗な黒髪、暁美さん。
私に声をかけたのに、彼女は私のことなんて見てなかった。

「鹿目さん、来週の日曜日は私と出かける予定でしょ?」
「あっ…そうだった。ごめんね、名前ちゃん。」
「いや、いいよ。予定が入ってたなら仕方ないし。また誘うから、今度空いてる日教えてよね。」

手をひらひら降って、私は鹿目さんから離れた。
暁美さんとすれ違う時、何かを言われた気がしたけど、聞こえなかった。聞こえなかったことにした。

そうだ、聞こえなかったんだ。
彼女の悪魔のような囁きなんて。




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