授業終了まであと10分。短いようで長い時間だ。これが終わればお昼休み。早く終わらないかなと願いながら窓の外を見た。
私の教室からはグラウンドがよく見える。
窓際特等席の風を感じながら見下ろすとそこには赤いラインが並んでいた。
二年生だと認識して、すぐに目線を迷わせた。…見つけた。

ワックスで逆立てた黒髪が少し目立つ。危ないからか、五輪のピアスはつけていないようだ。遠くなのになぜ見えるかって?それは光くんのことが大好きだから。とかではなく、単に視力が2.0だからである。これは私の数少ない自慢の一つ。

体操服似合わないなぁ。そう笑いながら光くんをじっと見つめていると、勘付いたのか先生が話しているのを無視してこちらを向いた。心臓が跳ねる。

こちらを見て、私を指差して口をパクパクさせている。さすがにこれを読み取るのは至難の技。なに?う、いお…うしろ?

振り返ると日差しを跳ね返したメガネ…ではなく、数学の先生がいた。

「そんなに二年生が気になるなら問2を問いてもらおうか?」
「う、ごめんなさい…」

アハハと教室中に笑い声が響いた。恥ずかしい。イケメン代表のあの白石君まで笑っている。くそー、光くんのせいで。

先生のお説教が4分。おかげで私はチャイムがなっても食堂に行くことができなかった。四天宝寺の食堂は人気が高いので注文できたとしても席が埋まってしまうのだ。だから早く行かなくちゃなのに…。

駆け足で食堂まで向かったものの時すでに遅しという感じで、食堂には人がごった返していた。券売機も長蛇の列だ。
いつも一緒に食べている友達が見当たらない。どうしよう…と視線を彷徨わせていると、ケータイが振動した。
友達からかもしれない!と少し前に買い換えてあまり使い方の分かっていないスマートフォンのボタンを押した。
メールは友達からではなくて、「ひかるくん」と書かれている。スマートフォンはメールを開かなくてもメッセージを途中まで読めるので便利だ。
光くんからのメッセージは短くて、開かなくても全文が読めた。「右斜め前」どういう意味だろう?
まっすぐ前を見ると券売機の列、すこし視線を右にずらすと…見覚えのある黒髪があった。

「ひかるくん!」「アホ、声でかいっすわ」

食堂はすでに騒がしいから少しくらい声が大きくても大丈夫なのに、とむすっとすると、光くんは荷物を置いていた椅子を退けた。座ってもいいのかな?
控えめに座ると紙切れを渡されて、「いってきいや」と立たされた。なんなんだ?と紙切れを見ると、それは私の大好きな唐揚げ丼の引換券だった。
うそ!と声を上げるとまたうるさいと怒られる。光くん買っててくれたの?と聞いても無愛想に別に、と一時期はやったアレのようにむすっと返されるだけだった。それでもいいの!うれしいから!
行ってくるねと言って商品受け取りの列に並んだ。唐揚げ丼、唐揚げ丼と小躍りしていると、光くんに目で「アホらし」と言われる。口に出さなくてもわかるもの、だって光くんが大好きだから!これはほんとう。


「ほんとにありがとう光くん!何かお礼しなきゃね」
「じゃあみつやの白玉ぜんざい一週間おごって」
「ええ、一週間?お財布大丈夫かな…」
「冗談っすわ、今日だけでええですよ。」
「いや、それは悪いから…でも1週間はきついので…間をとって3日!!」
「はぁ、ちゃんと先輩も着いてきてくださいね。金だけ渡してとかはダメっすよ」
「わ、わかってるよ!私もあそこの抹茶プリン大好きなんだもん…」

じゃあ三日間下校デートっすね、なんていう光くんに胸を撃ち抜かれて、「一週間にしておけばよかった!!」と後悔してしまった単純な私でした。おしまい!


131013






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