………え?
さっきまで、私と有人は、恋人らしくいちゃいちゃしていた。
まぁ、実際はそんな甘いものではなくて、有人が一方的に私に抱きついていただけなんだが…。
そんなときに、突然煙が現れたのだ。
火事と思い逃げようとしたけど、有人が見当たらない。
手を握っているはずなのに。
え、まさか、みたいな恐怖にとりつかれながら右手を見ると、
「おねえちゃん、だれ?」
とってもかわいい男の子がいた。
赤い目とか、髪とか、どっからどうみても有人だ。
たしかに、有人は背がひくいけれど…ここまでじゃない。
ていうか、マントつけてないし普通のTシャツだし。
「え…と、き、きみは?」
きょとんとした目で私を見る少年は、にっこりとかわいらしい笑顔で笑っていった。
「ぼくはきどうゆうとだよ!」
………え?
「おねえちゃんはなんていうの?」
「…わ、わたしは、名前…だけど。」
そうなんだぁ、とまたにっこりとわらった少年。
いやいやいや、まさか…
なんか、マンガとかにある入れ替わり?いや、ないよね。
某マフィアマンガじゃあるまいし…。
「おねえちゃん、どうしてぼくはここにいるの?はるなは?」
「え、春奈ちゃん?」
ああそうだ、まあ、しかたない。
某マフィアマンガのようにこの子が私の知る有人の数年前の姿だとしよう。
もしかしたら今さっきまで春奈ちゃんと遊んでいたのかもしれない。
それで、突然知らないお姉さんに手をつながれていたんだ。
「え…っと、今は雷門中学校にいるよ。」
「ちゅうがっこう?どうしてはるながちゅうがっこうにいるの?」
たしかに、妹が突然中学生になったよ、なんていったらびっくりだ。
まだ小学校にも入学して無いだろうに。
「よ、用があってね。だいじょうぶだよ。有人くん。」
まってたら戻るからね、と言い聞かせると、聞き分けのいい少年有人くんはうん、うんと頷いた。
有人も、昔はこんなにかわいかったのかあ…。
「ねえねえ名前はなんさいなの?」
「え、っと。14さいかな。」
「えーっと、えーっと、じゃあちゅうがくせい?」
「うん。」
そういうと有人くんはすごいね、じゃあわりざんもかけざんもできるんだね、といった。
ああ、子供は無垢でかわいい。
有人みたいにセクハラなんてしないもん。
いや、この子は将来あんなやつになるんだけど。
「名前って、ちゅーしたことある?」
「う、うん。」
きみとね!無理やりされたよ!
とか心の中で叫んでみるけれど、こんなかわいい少年に伝える気は皆無だ。
「ちゅーって、どんなあじなの?」
「…へ?」
にこにこにこにこ、
そんな擬音の似合う笑顔で、純粋無垢なその笑顔で、有人くんは言った。
「はるながいってた。ふぁーすときすはれもんのあじなんだって。」
…ふぁ、ファーストキス…!?
レモンの味!?それどころか有人の舌の味だったとおもうんですが!
あ、でも有人がレモン味の飴を舐めていたらそうなったのかもしれない。
なんせ、ファーストキスがディープキスだったもんなぁ。あんのエロ有人め。
「だから、ぼくちゅーしたいな。」
またまた笑顔。にっこり笑顔。
私が発言に硬直している間に、有人くんの顔が近づいてくる。
「、え、」
……………ん?
たしかに私は今、有人くんとほぼ無理やりにキスをした。
…
もう一度いう。
私は、有人『くん』とキスをした。
なのに、なんで舌がからまっているんだろう。
「ん、ふ…ぁ」
なんでゴーグルが額に当たるんだろう。
「っ、ぁ」
なんで服の中に手があるんだろう!!!
「うぁあああああああ!!!!!」
火事場のばかぢから、私の手のひらはおもいっきり有人をつきとばした。
「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆうとぉおお!!な、なんで!?なんで?!」
頭をぶつけた有人は、起き上がって私を見た。
その髪型だとあたまぶつけてもいたくなさそうだ。
「…それはこっちがききたい。」
有人曰く、突然車に轢かれそうになったらしい。
持ち前の反射神経とかで車の前から退くと、ちっちゃい春奈ちゃんが、いたんだそうだ。
おにいちゃんがいないと泣き喚く春奈ちゃんを慰めて、頭をなでていると、気がついたら私とキスをしていて、せっかくだからと手をだした…と。
「…手だすなよ!!」
「いや、めったにないことだったからな。」
ということは、有人くんはファーストキスを体験することなく春名ちゃんのもとへもどったということか。
「…昔の有人かわいかったよ。」
「昔の…?」
かわいさも変態になる要素も十分だったけどね!
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タイトルがエロゲのようだ…。