放課後、俺と苗字さんは図書室で勉強していた。
とりあえず、何処がわからないのかを知るためにワークの指定した問題をやってもらう。
意外と手順よくやっているように見えるが、


(なんちゅうか、単純なミスにハマりすぎじゃろ…)


√の計算ミスや符号ミスが目立つ。
多分彼女の癖なんじゃろ。
英語はケアレスミスせん癖に、数学だけは体質なんかのう。


「終わった!」
「よし、見してみんしゃい」


回答を広げ丸付けをしていく。
なんちゅうか、塾の先生になった気分じゃ。


…に、してもこれはひどい。
基本はともかく応用が。
考え方まではあっとるんじゃけど、なんで此処でミスするんじゃ、みたいなのばっかしじゃった。


苗字さんはものすごい自信満々で嬉しそうな顔しとるけど、正直そんな顔するような出来じゃないぜよ。


「…お前さんなんでそんな嬉しそうなんじゃ」
「えっ結構自信あったんだけど」


…やっぱり。
もう何も言うまい、と無言でワークを渡してやると、顔を真っ青にして目と口を大きく開いた。


「こ、こんなに間違ってたの…」
「えらいショックそうな顔じゃのう」
「この証明とか合ってるとおもってたんだけど」
「それは角度の書き方が間違っとる。言いたいことはわかるんじゃけど、絶対それじゃバツされるぜよ」
「ええ…」


苗字さんはがくり、と首を落とした。
そんな落ち込みなさんな、と頭をなでると小さく頷いて、再び頭を上げる。

それがなんだかかわいくて、胸にキた。


(子供みたいじゃ。)




…ふとおもった。

そういや、なんで突然数学勉強しようなんて思ったんじゃろ。
たしかにこれじゃ危ういのは危うい。
けれど、立海はエスカレーター式で外部より簡単なテストで入学できる。
それに他の教科の成績がこれだけよければ合計点での入学なんて余裕だろう。


「のう、なんで数学勉強しとるんじゃ?」
「…えっ、えーと…。」


ごそごそ、とスクールバックを漁り、そこから一冊のパンフレットを取り出す。
それは紛れもなく高校のパンフレットだった。
…なるほどのう。


「そこいきたいんか?」
「うん」
「…立海じゃあかんのか」

そう聞くと、苗字さんは少し困ったような笑顔で唸った。
なんでも、特待生になりたいらしい。
立海にも特待生制度はあるし、実際苗字さんは現在特待生として通っている。
だが、中学時代を特待生ですごしたからと言って、高校でも特待生でいられるわけではないらしい。
勿論中学から特待生だった人は受けやすいが、苗字さんは内申点が数学の分だけ足りていないので、立海で特待生になるより他のより特待生制度を受けやすい高校を受験するそうだ。


「…なんでそんな特待生にこだわるんじゃ?」
「私1人暮らししてるんだよね」
「へぇ」
「親が海外にいてさ。まぁ仕送り貰ってるんだけど、できるだけ負担を軽くしたいというか」


ただ単に自分が使えるお金を多くしたいだけ!と苗字さんはいたずらっこのような笑顔で言った。
存外ずるがしこい子なんじゃのう。


「よし、そういうことじゃったら協力したる。」
「えっほんと!?」
「まぁ既に数学教えるとは言うとるしのう。今更いやとは言わんぜよ」


ニヤリ、と笑って言うと苗字さんはやった!と大げさに両腕を上げて喜んだ。
その姿がやけにかわいくて、また頭をクシャリとなでる。


「仁王くんて頭なでるのすきなの」
「別に?」
「さっきから頭触られまくりなんだけど」
「いやか?」
「ううん」


そうか、といってまたひとなで。
したところで、下校時間ギリギリになっていることに気づき、俺達は図書室をでた。













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