もしも私を一語で形容するのだとしたら、きっと『不真面目』とか『不良』とか、学生としてあまりよろしくない単語が与えられるのだと思う。
不真面目で不良で先生からも好かれない学校のお荷物。
そんな私が何故今こんなところにいる。

なぜ、目の前の真面目で熱い、いや暑い男は自身のTシャツとかわらないくらいに真っ赤になっている。


「…は?」
「す、好きでござる…苗字殿を、お慕いしていると…」
「いや、聞こえなかったってことじゃなくってさぁ…」


真田幸村17歳高校二年生私と同じクラス。勤勉で真面目で顔もすっごいイケメン。ちょっと世間知らずで熱くなりすぎるとこもあるけどまぁ先生からの評判もなかなかによし。の癖に草食系男子。
そんな女子の大半から支持されるような男が何故、こんな私に告白なんかしているんだ。

あれか、罰ゲームか。
どうせ隣のクラスの伊達と賭けでもして負けたんだろう。
その罰ゲームが私に冗談で告ってこいよみたいなのだったのかもしれない。
こんなに真っ赤なのは、自らの不甲斐なさに怒り震えているんだろう。そうだそうだ。


「別に罰ゲームだったらそう言ってくれればいいんだけど」
「ば、ばつげーむなどではござらん!!」


カッ、とアーモンド形のかわいらしい目を見開いて、私を見た。
気持ち気温が上がっている気がする。気のせいではないかもしれない。


「俺は心のそこから苗字殿に恋慕しているのでござる!!」


恋慕ってなんだ、あれか、すきなのか。
いやだから冗談でしょ?

「冗談などではござらんと!なんと言えばわかっていただけるのか!」

むずかしいでござる、と真田幸村は頭を抱える。
ぬおお、と唸っていると校舎につたうようにつくられた花壇の中の茂みが、ごそごそと動いた。

「ん?」
「こら旦那!ちゃんとしないと!」


ぴょこ、と緑の中からオレンジの明るい頭が飛び出す。
たしか3年の猿飛先輩。真田幸村のオカンだ、って友達が言ってた気がする。


「あの」
「あーえっと、苗字チャン?」
「そうですけど」

なにこのひと
オカンって割にはチャラいし、まさに真田幸村と真逆。この人がオカン?
どっちかっていうと私と同類な気がする。
けどこの人はきっと私ほどバカでもないんだろう。頭よさそうな顔してるし。


「聞いたとおりなんだけど、旦那がアンタに惚れてるんだよね」
「はぁ」

だからそれは冗談じゃないんですか

「いやマジ冗談抜きで。旦那ってそういうことに免疫ないから嘘ぽいかもしんないけど、マジなんだよ。これだけは信じてやって」
「はぁ」

ね、と猿飛先輩は念を押すように言ってくる。
正直いうとこの時点で私はどうでもよかった。
真田幸村の事は全然知らないっていうか顔以外好みじゃないし、どっちかっていうと猿飛先輩みたいなチャラめの人がタイプだし。
真田幸村も髪長いしまぁ真面目そーにはみえないけど、中身が好みじゃない。
こんな硬そうな人と付き合える気しない。
だから私の答えは最初からNOだった。まぁ、他の男だったとしてもいま誰かと付き合うとかそういう気分じゃなかったし多分大半拒否するだろう。


「あの、それで」
「あーうん。多分苗字チャン旦那のこと知らないよね?」
「名前だけしか知りません。」
「だよね、だからいきなり付き合えとかは言わないからさ、友達からはじめてあげてくんない?」


なんだ、せっかくお断りします、なんて言おうと思っていたのに猿飛先輩にはそれはお見通しだったらしい。
まぁ友達ならいいかなー、と思ったので、こちらこそ、なんていってみる。
すると真田幸村が尻尾を振る…ように嬉しそうにしていたので、何故かこっちまで嬉しくなった。
真面目なやつは好きじゃないけど、こういうかわいい人は嫌いじゃないかもしんない。


「そ、それでは俺の事は幸村と呼んでくだされ!!」
「あーうん。じゃあ私のこと名前でいいから」
「名前殿!」
「殿はいらないって」

固いってば、と言いかけるとしかし譲らぬといった顔をされたので、まぁいいよ、と返した。
あーなんか新鮮。男友達ってチャラいのしかいなかったし、2人っきりになったらキスしよエッチしよなんて言ってくるやつばっかだったからちょっとテンションあがる。

最後にアドレスと電話番号を交換して、私達は分かれた。



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